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複雑・ファジー小説
- Re: 血染めの彼岸花【月夜に降り立つ処刑人】 ( No.20 )
- 日時: 2011/07/13 19:17
- 名前: 王翔 (ID: COM.pgX6)
第十四話
散歩をしていたら、すっかり暗くなってしまっていた。
「早く帰らないと……」
沙零は、そう呟くと田畑に囲まれた道を早足で歩き出した。
空を見上げる。
月の光が地上を照らしていた。
「ん?あれ……?」
沙零は、怪訝そうに首を傾げた。
今、どこにいるのか分からない。
いくら、歩き回っても同じところに戻っている気がした。
「あれ……?なにこれ」
しばらく、歩くと彼岸花が大量に咲き誇る花畑に辿りついた。
まるで、呪いにでもかけられた気分だった。
目の前を見る。
花畑の奥に、人影が見えた。
ガッ
ブチブチ……
嫌な音が聞こえた。
「!!」
吸血鬼だった。
その吸血鬼は、人を喰っていた。
「……」
吸血鬼と目があった。
ザッ
沙零は、全力で走った。
後ろから、足音が聞こえる。
追って来ているのだ。喰らうために……
何でこんなことに……
心臓が潰れそうだった。
しばらく、走り続けると加世田神社が見えた。
沙零は、急いで駆け込んだ。
「壇来さん!」
「こんな時間にどうした?」
「その……吸血鬼が……」
「大体分かった」
壇来は、部屋から刀を出して来ると外に向かう。
沙零もついて行こうとしたが、
「待て」
「え?」
「見ない方がいい」
そう言われ、沙零は本殿の中で待つことにした。
壇来が出て行ってから、数分で吸血鬼の断末魔が聞こえた。
「お前、夜には出歩くな」
「うお……すんません……」
「お前は…何もしなくていい。普通に、幸せにしていてくれれば……もう、あんなのは……」
壇来は、悲しげな表情で呟く。
「え?」
沙零は、不思議そうに首を傾げた。
「い、いや、こっちの話だ。気にするな……」
まだ、私の知らないことがあるんだ……
そう思った。
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