複雑・ファジー小説

Re: 血染めの彼岸花【月夜に降り立つ処刑人】 ( No.32 )
日時: 2011/07/16 12:15
名前: 王翔 (ID: UfUkp6Ds)

第二十話



「……」
これは、前世の記憶だ。
今でも深く残っている、絶対に忘れることはないであろう記憶だった。
千沙は、毎日毎日、暴走した吸血鬼を処刑する日々を送っていた。
ただ、それを見ていることしかできなくて……
千沙が多くの罪を一人で背負っていくさまを……
止めることも、助けることもできなかった。
ある日、千沙を光山に呼び出した。
「用事って何ですか?」
千沙は、不思議そうに問いかけてきた。
「その、俺と村を出ないか?」
「え……」
「村を出て、何もかも忘れて……これからは、楽しく生きていけばいいじゃないか」
「ダメです」
千沙はそう答えた。
「私が、やらなければならないんです。私が、自ら受けた役目ですから」
千沙は、にっこりと笑った。
「何で……何でなんだ!!」
何度も、同じことを言ってみたが、とうとう千沙がその申し出を受けることはなかった。
救えなかった……