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複雑・ファジー小説
- Re: 血染めの彼岸花【月夜に降り立つ処刑人】 ( No.35 )
- 日時: 2011/07/16 19:19
- 名前: 王翔 (ID: JnkKI7QF)
第二十一話
少しずつ、祭りの準備が始まっていた。
夕方頃になると、村の大人達が大きな看板を組み立てたり、山にお供えものを持って行ったりしている。
沙零は、夕焼け色に染まった空の下、いつものように帰り道である田畑に囲まれた道を歩いていた。
「楽しそうだなぁ」
そう呟いた。
何て言うか、村の人達が集まってみんなで協力して、なんてことは都会じゃなかなかないからなぁ。
しばらく帰路を歩いていると、壇来と鉢合わせした。
「あ、壇来さん。こんにちは」
沙零は、笑顔で案内した。
「ああ…沙零か」
「散歩ですか?」
「いや……実は、お前に用があってな」
「用、ですか?」
壇来は、周囲を見回した。
周囲は、祭りの準備をする大人達で賑わっている。
「ここでは、話しにくいな。加世田神社まで来てくれるか?」
「はい、分かりました〜」
沙零は、笑顔で答えると壇来に続いた。
とりあえず、加世田神社の前まで来た。
この辺りは、廃墟だからか、今までの賑わいぶりが嘘のように人通りがまったくない。
「ここでいいか」
「話って何ですか?」
「もうすぐ祭りだろう?これを渡しておく」
「え?」
手渡されたのは、ナイフだった。
「祭りの日は、多くの吸血鬼が暴走する。万が一、襲われることもあるかもしれん。その時は、これを向けろ。吸血鬼は、刃物を見ると逃げる。あくまで、脅しのためだ。絶対に、刺すな」
「う、はい……気をつけます」
「それで、もう一つ」
「はい?」
壇来は、一瞬、迷っていたが、告げる。
「実は、俺も吸血鬼だ」
「え?でも、前に夜、外にいましたよね?なんともなってなかったし…」
「神社の生まれである吸血鬼は、ああなることはない。かなり耐性があるからな。さざめも、だ」
「さざめちゃんも?」
「ああ、今は吸血鬼の処刑は、吸血鬼が行う」
「そう、なんですか…」
吸血鬼……か。
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