複雑・ファジー小説

Re: 血染めの彼岸花【月夜に降り立つ処刑人】 ( No.36 )
日時: 2011/07/17 09:51
名前: 王翔 (ID: 72/NuTit)

第二十二話

ついに、祭りの日がきた。
村中は、賑わいをみせていたが、沙零は浮かない顔をしていた。
「……」
「どうしたんですか、沙零さん?」
雫が心配そうに顔を覗きこんでくる。
沙零は、ぱっと顔を上げた。
「何でもないです」
「そう、ですか?」
「はい」
沙零は、笑顔で頷いた。
「それにしても、賑やかですね〜」
「はい、みんな楽しそうですね」
沙零は、壇来の言っていたことが引っかかっていた。
祭りの日は、多くの吸血鬼が暴走してしまい、処刑されると。
じゃあ、さざめさんは大変、なんだろうなぁ……
一年で一番辛い日かもしれない。
「雫ちゃん、私、ちょっと行って来ます」
「はい、待ってますね」
沙零は賑わう神社の前を離れた。
「……」




村の外れまで行くと、彼岸花の花畑に辿り着いた。
彼岸花は、月の光を浴びていた。
「おーい」
声が聞こえ、振り向いた。
「雷手さん?」
「うん、こんなとこで何してんの?」
「その、さざめさんを探して……」
「え?さざめを?」
その時だった。
遠くで声が聞こえた。




声が聞こえたのは、光山の山頂だった。
沙零と雷手は、山頂に来ていた。
そこにいたのは、さざめと一人の女性だった。
「どうして……私の夫を…」
女性は、ナイフを持っていた。
「すみません…私を殺して気が済むならどうぞ」
さざめは、静かな口調で言った。
「同じだ……」
雷手は、呟いた。
「え……」
「三百年前と……」
「夫を、返して!!」
女性は、ナイフをさざめに向けて、突き出す。
「さざめさん!」
「よせ!!」
沙零は、女性とさざめの間に割って入った。
ナイフが、沙零の胸に刺さった。


月が見える……