複雑・ファジー小説

Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.288 )
日時: 2012/10/31 16:43
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第二話 売られた喧嘩


ルヴェリは目を閉じた。
来るべき衝撃に耐えるように。

グイッ


しかし、何者かによって引っ張られた。
強い力。
とっさに目を開ける。


「何者ッ!」


巳好がキッと睨む。
後ろを見ると猫を抱いた幼い少女が崩壊した建物の残骸の上に立っている。
服装は見たことも無いものだ。
花模様の、小難しそうな服。
動きにくそうなこと、このうえない服装をした少女にも見覚えが無かった。
しかし、髪を耳にかけるときに見えた左耳のピアス。

それを見てルヴェリも巳好も確信する。

味方 / 敵 だと。


「・・誰だよ」


巳好が低い声を出す。
少女はどこか怒っているようなそんな表情だ。


「なんでうちが来ないといけないんだろうねぇ、デブにゃん?」


少女は腕の中の猫に話しかける。


「ニャー」


猫は一声鳴いた。


「誰だよ!」


ブンッと右手を振り上げる。
土の塊が何本も突き出てくる。
ルヴェリは少女の元へと後退しながらそれを避ける。


「おい、お前は・・」
「あなたはルヴェリさんですか」


言う前に尋ねられ、ルヴェリは戸惑いながらうなづく。
少女は空和を指差して同じように尋ねる。


「空和さんですか」


それにもうなづく。
すると、少女はまたふてくされた顔に戻って巳好を見つめる。
巳好も見つめ返す。


「・・・うちは“異変”を伝えに来ただけなんだよ」
「・・“異変”?」


巳好は首をかしげる。
少女はうなづく。


「ここは隔離された空間らしいね」


辺りを見回しながら言う。


「別にうちはあんたたちと戦いに来たわけじゃないからね。もう帰るよ」


ねー、と猫にまた話しかける。
猫は目を細くしてニャーと鳴く。


「えー、だってうち別に『戦え』って命令されてないもん」


それに、と少女は続ける。
怪しい色を帯びた瞳が巳好を射抜く。


「あいつら全然強そうに思えないもん」
「お前っっ!」


その言葉に巳好がキレる。
両手を振り上げる。
土の塊が一つとなって、まるで台風を想像させる。


「もー、せっかちなんだからねー」


少女はため息をついて目を閉じる。


「でもまぁ・・」


スッと再び開けられた瞳は怪しく光る。


「売られた喧嘩は買わないと、うちの種族の名が泣いちゃうね」


少女は迫るくる土の台風を見ながら冷静に言った。
猫は少女の瞳を見て、小さく身震いをした。