複雑・ファジー小説
- Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.295 )
- 日時: 2012/12/21 13:48
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第九話 怪我は?
「只今戻りました〜♪」
愛が笑顔で言う。
豪華な部屋の中、一人の少女が椅子に座っている。
綺麗な綺麗な黒い瞳が、愛を捉えた。
思わずゾクリとした。
だけどそれは、恐れているのではなくて・・・。
憧れているのだろう。
愛はそう結論付けた。
「おかえりなさい」
フワリと微笑む。
その笑みは先ほど見てきた少女と瓜二つ。
さすがは双子というべきか。
「姉姫様の妹を見ましたよ」
「へぇー。どうだった?」
クラリとする甘い匂いが鼻につく。
おそらく彼女が持っている花の匂いだろう。
「姉姫様にお顔は似てましたけど、やっぱりまったくの別人です。姉姫様のほうがお美しくてお強いですよ!」
着物の裾を持って言う。
愛の言葉に、少女はニッコリと微笑む。
「ありがとう、愛」
「い・・いえ・・・・・」
カァーッと顔が赤くなっていく。
愛は思わず顔をおさえた。
その様子を見て少女はクスッと笑う。
「そういえば愛・・。私は命令していないのに戦ってきたそうね」
コツリと立ち上がる少女の言葉にビクリと肩を震わした。
命令違反。
異変を伝えるだけで、そんな命令は受けていない。
命令違反は自分のせい。
「も・申し訳ありません!お好きなように罰を!」
バッと頭を下げる。
猫が心配そうにニャーと鳴いたのを聞いた。
そっと肩に手が置かれた。
それだけで体が震える。
怖い。怖い。
それが愛の頭を支配していた。
しかし。
少女の発した言葉はもっと優しい言葉だった。
「命令をしていない戦いで、準備が整っていなかったんでしょう?怪我はないか?愛」
思いがけない言葉。
顔を上げると、本当に心配そうにこちらを覗く黒い瞳。
「・・・ごめ・・・ごめんなさ・・・ごめんなさい・・・」
「何故謝る?私はあの命令違反は間違ってはいないと思うぞ」
「でも・・でもぉ・・・」
ヒックと涙をこぼす。
「怪我は大丈夫なのか?」
「大丈夫・・・大丈夫です・・・姉・・姫様・・」
涙をこぼす愛を、少女・・・ネイトは優しく抱きしめた。
かつて
『ネイトぉ〜・・・』
かつて
愛した
妹のように
「・・・姉姫様・・」
落ち着いたのか愛が声をかける。
「どうかしたか?」
「姉姫様、うちの占いで分かった異変・・・。その原因・・・今分かりました」
「・・・それは何だ?」
真剣な表情。
「うちたち裏の存在と、表の存在。二つともに敵であり、味方でもある存在が・・・異変を・・」
「・・・つまり?」
「・・・つまり・・・・それは・・・」
声が震えている。
愛の手をギュッと握ると、愛は震える声でつぶやいた。
「・・・【神】」