複雑・ファジー小説
- Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.298 )
- 日時: 2012/12/23 12:22
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第十一話 元凶
廻る廻る。
運命の輪は廻る。
元は一つの存在だった双子。
それが二つに分かれて、生を持って生まれてきた。
ずっと二人一緒だった。
二人で一つだった。
それなのに。
彼女たちは分かれてしまった。
運命の歯車はさび付いた。
壊れていく。
流れているメロディー。
奏でる楽器。
音がずれる。
不協和音。
愛しさと憎しみ。
恨みと悲しみ。
守りたいのに壊したい。
生かしたいのに殺したい。
双子はお互いを傷つけあう。
正反対のもの。
決して交じり合わないものが。
捻じ曲げた双子の力。
その心の奥に眠るのは、かつて共にすごした穏やかな日々の記憶。
それさえも封印して。
けれど、結局は同じこと。
二人とも思っている。
『この世界を統一すること』
それなのに何故、拒絶しあうのか。
それはきっと、私怨からなのだろう。
「こんな・・・ことって・・っ!」
胸の奥が締め付けられる記憶。
苦しそうに胸を押さえてつぶやく。
その肩を【絶望】が優しく支える。
「【希望】・・・」
「こんなことって・・ないわよ・・・」
人々に希望を与える役割を担う【希望】が、涙をこぼす。
純粋さゆえに、感情に左右されやすいという脆い一面を持っている。
しかし、この記憶を見て悲しみを覚えたのは彼女だけではない。
「(俺でさえも・・・これは・・・)」
唇をかむ【絶望】
【希望】とは逆の、人々から希望を奪い絶望を与える役割を担う【絶望】。
黒き残虐さをもつ彼は、苦しむ姿を見ても愉快そうに笑う性格の持ち主だ。
そんな彼さえもが、記憶を見て心を揺さぶられている。
「なんと・・・いう・・・」
セラ・・【育み】が言葉をこぼす。
穏やかに微笑んでいたのだが、その表情が一変している。
全てを育む役割を担う【育み】。
平等に与える彼女は、かつて人間と出会って暫らくの間人間と共に暮らしていた。
そのため人間についての知識は神の中では一番詳しい。
だからこそ、彼女には分かる。
愛しているのに。
憎んでいるのに。
守りたいのに。
殺したいのに。
そんな焦点の定まらない人間の思考を見てきた。
「人間とは不思議だな・・・」
【孤独】がポソリと言い放つ。
「・・・元凶が・・これとは・・」
【奇跡】が顔をゆがめる。
「何が元凶でも構わない」
凛とした声が響く。
【終わり】だった。
彼女は表情を崩していない。
「アタシたちはこの世界の秩序を、規律を修正する。それが神としての仕事」
「もう二度と、世界を滅亡へと導かせない。それを先代は望んでいるはずだ」
【始まり】も【終わり】に続いて言う。
その言葉に、それぞれが重々しくうなづいた。
そう。
自分たちは神なのだ。
自分たちの思いだけで行動することはできない。
それが神としての責任。
十二の存在の一つである責任。
「能力を開花させた元凶。全ての元凶。その二つの存在から広がった世界の異変か・・・」
【定め】か憎々しげにつぶやく。
人間嫌いの彼女にしては当然の反応だろう。
「・・・それで・・原因は分かった」
「どうするのですか?」
【孤独】がそういい、その続きを【絆】が言う。
全員の目が双子に集まる。
「既に決まっている」
「神である我らは」
世界の修正が目的なのだ。
だから。
「「元凶を絶ち、再び能力を奪う」」
「もう二度と人間を信用などしない」
「潜在的に持つ能力も、全て奪い取る」
そして、一呼吸置いて、つぶやく。
金色の瞳が輝く。
「そして・・・」
「「今ある人間を全て消去し、新たに創りだす」」
核である双子の言葉。
その言葉は言霊。
十の存在が悲しそうに、嬉しそうに、楽しそうに、悔しそうに、苦しそうに、うなづいた。