複雑・ファジー小説

Re: 姉妹の誓い 〜絆〜 【第三章突入】 ( No.299 )
日時: 2012/12/25 12:11
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

☆休憩☆ 〜膝枕〜


穏やかな風がフワリと髪を触る。
一本の大きな木の根元。
そこに二つの影があった。

一つは【希望】。
珍しく髪を二つに結っており、ゆったりとしたワンピースに身を包んでいる。
その表情はどこか照れたようだ。

もう一つは【絶望】。
【希望】の膝に頭をのせ、空いている両手で細い腰を抱きしめている。
その表情はいつもの愉快そうな顔ではなく、デレッとした幸せそうだ。

それもそのはず。

やっと【希望】と二人きりになることができたのだ。
それまではまだ目覚めていない同房を探しに行くだとか、神としての役目を果たすとかで中々暇にはならなかった。
また、【希望】も同じようなことで、暇がなければ二人っきりになることも難しい。

一応ひと段落着いたので、こうして二人一緒にいるのだ。


「・・・【希望】ー」
「・・何だ」


少し遅れてやや不機嫌そうな【希望】の声が返って来る。
別にこの状況が嫌なのではない。
むしろ、【希望】も心の底では二人になることを望んでいたのだ。
だが。
今が今だ。
世界の規律が乱れた原因を突き止めなくてはならないこの大変なときに、半ば強引にこのような状況を作らされた。
【希望】は自らの役目に誇りを持っている。
そして、責任感が強い。
自分のことは後回しで仕事に没頭することがよくあった。


「少しやせたんじゃないか?」
「はぁっ?」


ギュッと腰周りを確認するように抱きしめられる。


「うん、やせてる。目覚めた途端張り切りすぎたんじゃないか?」


こちらを見据える黒の瞳。
その言葉に呆れながら【希望】はため息をついた。


「何故そんなことお前に分かるんだよ」
「愛しい【希望】のことなら何でも分かるぞー」


ケラケラと楽しそうに笑う。


「ってわけで、もう少し太れ」
「何故それに結びつく」
「俺としては今の【希望】も好きだが、もう少し太った方が健康的だと思うぞ。そのほうが抱きしめるときの感覚が・・」
「【絶望】、頭を吹き飛ばすぞ」


カチャリッとつめたいものを頭に押し当てられて【絶望】はキョトンとする。
見慣れないものが【希望】の手の中に納まっている。


「何だそれは」
「これは拳銃というらしい。【運命】がくれた」
「ふぅーん。俺たちが寝てる間に作られたものか?」
「そのようだな」


拳銃。
確かに1000年前には存在しなかった。


「・・・あー。【希望】、俺少し寝るわ」
「は?もう少しで集合の合図が掛けられるぞ?」
「うん、それまで寝かして。【希望】の膝、柔らかくて気持ちいいわー。寝心地最高」
「恥ずかしいことをタラタラとよく並べるな・・」


呆れながらも【希望】は【絶望】の頭をのかしたりはしない。
どれだけ拒絶したふりをしていても、結局【希望】は【絶望】を好いているのだ。


「おやすみ」
「ん・・・」


眠りについた【絶望】の髪をそっとなでた。