複雑・ファジー小説
- Re: 妖怪を払えない道士【イラストアップ】 ( No.106 )
- 日時: 2011/08/08 16:56
- 名前: 王翔 (ID: zcf9W2nI)
第二十一夜 後編 続き
結局森の奥にある薄暗い洞窟に来た。
冷たい岩に囲まれた場所で少し寒いぐらいだった。
地面に座ってお茶をすすり、話を切り出す気配のない風白鳥に対し、私は早く話を終わらせて帰りたかったので早々に
聞いた。
「で、聞きたいことと言うのは一体なんなんだ?」
「聞きたいこと……大したことではないのだが」
風白鳥は、お茶を置き、もったいぶるように黙る。
しかし、私はのんきに待つ気はさらさらない。
刺々しい声音で言い放つ。
「用件を早く言え。早くしないと、もう出ていくぞ」
「それは困る。分かった」
風白鳥はしばし、迷うような様子を見せる。
その様子を見て流石に急かすことができずに、風白鳥が口を開くのを待った。
風白鳥は顔を上げ、口を開く。
「あなたのお父様は元気か?」
「え……」
予想外の言葉に思わず呆けた声を漏らす。
私が目を白黒させているのに構わず、風白鳥は続ける。
「私は、あなたのお父様の手伝いをしていたことがある」
「そうなのか……?」
おずおずと尋ねると風白鳥は深く頷く。
……手伝いか。今の私と闇鴉と似たような関係だったと。
「なぜ、今は共にいないんだ?」
「一人前の道士になったからと、もう自由にしていいと言われて」
「そうなのか……まあ、父上は元気だが」
「では、お母様は?」
思わず黙ってしまった。
母上のことを聞く風白鳥の瞳には、父上のことを聞いた時とはまた違った感情の光が灯っている気がした。
私は、重々しい口をゆっくりと開く。
「母上は……二年前に死んだ」
「何と……短い……」
「……父上には会わないのか?」
風白鳥は一瞬迷うような素振りを見せた後、
「いや、いい。さて……墓参りにでも行って来るか。ああ、最後にこの間は攻撃なんぞしてすまなかった。千連党の娘がどんなものか
気になったというところだ」
苦笑混じりに言い、その姿をくらませた。
「千羅」
父上に声を掛けられ、首を捻った。
「何の用だ?」
「白鳥を飼おうと思うんだけど、一緒に選んでくれないか?」
父上は笑顔で言った。
「なぜ白鳥を……?」
「きれいだからかな。急に飼いたくなったんだ。どうしてだろうな」
目の前の湖を見ると、赤みを帯びた陽光に照らされ、白い羽を輝かせる白鳥が鬱陶しいぐらい泳いでいる。