複雑・ファジー小説
- Re: 妖怪を払えない道士【闇鴉は能天気すぎ】 ( No.11 )
- 日時: 2011/08/06 10:37
- 名前: 王翔 (ID: FAB9TxkG)
第六夜
「イマワシイ、イマワシイ……」
森喰い獅子は大きな羽をはばたかせ、鋭い牙をむき出しにして飛びついてくる。
さっとかわし、木の後ろに身を潜めた。
「ドコダ…」
森喰い獅子が、目をギョロギョロさせながら周囲を見回している。
私は、それを一瞥し呪文を唱える。
「天の陣、地の陣、応えよ、今、この時、悪しき妖怪、力を求める者、どちらも揃う、その偉大なる力を我に与えたまえ」
銀に銃口を森喰い獅子に向ける。
幸い、まだ気づいていないようだ。
「退!」
銃の引き金を引いた。
大きな銃声が響き渡る。
銃からは煌めく白い光線のようなものが放たれ、森喰い獅子の身体を貫く。
「グルル…人間メ…人間ゴトキガ、我ニ傷ヲ負ワセルナド……」
森喰い獅子は傷口を舐め次の瞬間、こちらに勢い良く疾走してきて突進してくる勢いだ。
「退!」
もう一度引き金を引き光線を放つ。
次は森喰い獅子の足に命中し、森喰い獅子は血反吐を吐きながらよろめく。
「貴様……許サン!!ガアアアアア!!」
森喰い獅子は大きな咆哮を上げると、木々を喰い散らかしながらこっちに向かってくる。
早い……
「ガアア!!」
「く……!」
回避が間に合わず、腕を鋭い牙で噛まれた。
激しい痛みが走る。
このままでは、食いちぎられそうだ。
私は空いている方の腕で銃弾を放った。
また大きな銃声が森のなかに響き渡る。
銃弾は、森喰い獅子の頭に命中した。
「グルアアアアアアア!!」
森喰い獅子は、よろめきながら後退した。
「そろそろいいかな〜?」
先ほどまで空から愉快そうに見物していた闇鴉が舞い降りた。
相変わらず緊張感も何もなくにこにこと笑顔を浮かべている。
「さて、森喰い獅子さん。そろそろさよならしよっか?」
「貴様…闇鴉……妖怪ノお前がナゼ……」
「うーん、秘密」
闇鴉が、羽をはばたかせると、その姿を大きな鴉に変貌させる。
「ヤミ、カラス……」
闇鴉は、森喰い獅子を喰らった。
それはもう、無惨に。
「疲れちゃったな〜」
「お前…どっちが本当の姿なんだ?」
「こっちだよ〜、あっちは戦闘用ってとこかな」
「なるほどな」
笑顔で答える闇鴉の言葉にとりあえず納得した。
闇鴉、か……
「ねーねー、晩ご飯なに〜?」
闇鴉は笑顔で質問を投げかけてくる。
「鴉の丸焼き」
そっけなく答えてやった。