複雑・ファジー小説

Re: 妖怪を払えない道士【闇鴉は恐ろしい】 ( No.17 )
日時: 2011/08/20 17:52
名前: 王翔 (ID: YD0nNCEn)

第七夜


 今日は、雨が降っていた。
 ザーザーと音をたてて、空から水が降り注ぐ水が地面を濡らして濃い茶色に染めていく。
 私は、窓からボンヤリとその様子を眺めていた。

「わー、雨だねぇ、千羅ちゃん」
 
 背後から闇鴉が声をかけてくる。

「こんな日は……アメ小僧が出るかな?」
「アメ小僧?」
 
 知らない名前だったので、思わず聞き返した。
 闇鴉は、にこにこと笑顔を浮かべる。

「アメ小僧は、雨の日に出て来て人に飴をもらおうとするんだよ〜まあ、害はないからね〜」
「何だ、害はないのか」
 
 私も、害のない妖怪まで退治するような奴ではない。
 害がないなら、放っておこう。
 まあ、どんな妖怪なのか気にならないと言えば嘘になってしまうが……
 こんな天気の日にわざわざ外に出て確認するのも……

「二人ともどうしたの?」
 いつから部屋に入って来ていたのか、姉上が不思議そうに質問してきた。
 姉上の質問に答えない義務はない。

「アメ小僧の話をしていて……」
「気になるの?」
「まあ、道士であるし、いろんな妖怪のことを知っておくべきだとは」
「じゃあ、探してきたらいいじゃない」

 まあ、いろんな妖怪のことを知っておきたいということもありアメ小僧を探しに行くことにした。
 傘をさして雨が降るなか、神社の周辺を歩いた。
 とりあえずぐるりと周囲を回ったのだがアメ小僧は見つからず。

「千羅ちゃん必死でかーわいー♪」
 
 闇鴉がにこにことそう言う。

「必死じゃない!」
 
 とりあえず、慌てて言い返した。
 そう、べつに必死じゃないんだ。そんなに見たいってわけでもないんだ、うん。

「あ、来たみたいだよ〜」
「え?」
 
 闇鴉に言われ、振り向いて見ると小柄な少年が立っていた。
 これが、アメ小僧か。

「飴ほしいなのー」
「えーと…」
「千羅ちゃん、餌付けだよ〜。飴、持ってきたでしょ?」
 
 闇鴉に促され、ポケットから飴を取り出し、アメ小僧に手渡した。

「ありがとうなの〜。一生ついて行くなの〜」
「は……?」
 ついて来なくていいのに……
「餌付け成功だね〜」
 
 無駄な居候が増えた。
 私は一応妖怪を退治する道士なんだが……どうしたんだ、これは…