複雑・ファジー小説

Re: 妖怪を払えない道士【闇鴉はニコニコ】 ( No.25 )
日時: 2011/08/20 17:55
名前: 王翔 (ID: YD0nNCEn)

第十一夜



「力をなくした、哀れな道士……」

 背に白い羽を生やした妖怪は、笑いながらそう告げた。
 森の草花が風で揺れる。
 いきなり、出て来て失礼な妖怪だ。
 コイツは、何の妖怪だ?見たことはない。

「お前……」
「私は、風白鳥……お会いできて光栄、千羅殿」
「……」
 
 私は、懐から銃を取り出した。
 それを風白鳥に向ける。
 風白鳥は、愉快そうに笑う。
 どうしても、その愉快そうな笑いが不愉快だった。

「おもしろい……」
「何がおかしい?」

 流石にしびれをきらして聞いた。

「千羅殿…あなたは、私に傷を負わせることはできても払うことはできない。頼りの闇鴉は、どうした?」
「置いて来た」
「なるほど…ところで、知ってるだろうか…私も、闇鴉と同じく人の力を奪うことができる。ただ、方法が違う。私は、人を喰らってその力を手に入れる。あと、何の力を持っていない人を喰らっても、強くなる」

 人を喰らえば喰らうほど、強くなっていくと言うことか。

 これは、危険だ。
 野放しにはしておけない。

「応えよ、天の陣」

 銃の引き金に手をかけ、

「退!」

 引き金を引いた。
 白い光を纏った銃弾が発射された。
 風白鳥は、高く飛び上がり、銃弾は木に命中する。
「この……」
 すぐに、銃を上に向けた。
「退!」

 銃弾は、風白鳥の腕に命中した。
 風白鳥は木に飛び乗り、腕に手をかざす。
 すると、みるみる傷が癒えていった。

「厄介な……」

 払うことはできず、傷を負わせることしかできない私にとっては、非常に相手が悪い。

「さて、こちらからも…」

 風白鳥は、愉快そうな表情で呟くと木から、飛び降りた。
 そして、大きな風を巻き起こす。

「……っ!!」
その風に、身体を切り裂かれる。

「くぅ……」
 気が遠くなるほど痛い。
 これが、ピンチと言うやつか。
 立っているのがやっとだった。流石に闇鴉を連れて来なかったことを後悔した。

「さて…」
「!!」

 風白鳥に髪の毛を掴まれた。
 喰われる……
 そう思い、ぎゅっと目を閉じた時だ。

「はいはーい、ストップ。そこまでだよ〜」

 いつの間にか、闇鴉がいた。