複雑・ファジー小説

Re: 妖怪を払えない道士 ( No.3 )
日時: 2011/08/06 10:01
名前: 王翔 (ID: FAB9TxkG)

第二話


「助けて、あげようか?」
「は……?」
 闇鴉の言葉にどう反応して良いのか分からず、ただ固まるしかなかった。
 コイツ、何を言ってるんだ?
 しばらく沈黙が続き木々の葉や草が風で揺れる音のみが聞こえた。
「だから、君の妖怪退治、手伝ってあげようか〜?ほら、君にはもう妖怪を倒せないけど、僕には倒せるからね〜」
 闇鴉は地面の草をむしってピリピリ破きながらにこやかに告げた。
「力を返せ」
 こんな妖怪なんかに頼ってたまるか。
 闇鴉は困ったように苦笑いをする。
「そうしたいけど、一度吸い取った力は元に戻せないんだよね〜」
「な…」
 じゃあ、まさか……コイツに頼るしか方法が残ってないのか?
「何が目的なんだ」
「退治されちゃうの嫌だからさ〜、君の手助けして免れたいわけだよ」
 そう言うこと、なのか?
「ねーねー、どうする〜?このまま道士やめちゃう?それとも……僕に頼ってでも続ける?」
 闇鴉は愉快そうに尋ねてくる。
 頼って、と言われると改めて自分の力がなくなったことを実感し、敗北感がこみ上げてくる。
 私は不愉快極まりなかったが、答えは一つしかなかった。
「分かった」
 私は、闇鴉の申し出を受けた────……。




 神社に戻ると、誰もいなかった。
 とりあえず、自室に行くと座布団に座ってお茶を飲んだ。
 闇鴉は、楽しそうに部屋の中を探索している。
「わ〜☆すごいねー。あ、そう言えば、君の名前は?」
「千求道 千羅」
「千羅ちゃんかー。変わった名前だね〜」
 私は、さっと闇鴉から顔を背けた。
「私は…お前のことを良く思ったわけじゃない。道士でいるため、仕方なくだ」
「はいはーい。ねーねー、この部屋可愛いねー。何か、ピンクと白ばっかりでお花畑にいるみたいだよー」
 闇鴉は、妖怪とは思えないほど無邪気な笑顔で語る。
 コイツ、本当にあの闇鴉なのか?
「……それにしても、どう説明するべきか」
 姉上には、言わなければ……妖怪の力を借りるなんて、やはり怒るだろうか……
 私は沈んだ気分でため息をついた。