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複雑・ファジー小説
- Re: 妖怪を払えない道士【千羅ちゃん頑張るぞ】(十五夜完成) ( No.42 )
- 日時: 2011/07/23 18:58
- 名前: 王翔 (ID: oivBxJIz)
第十五・五夜
────妖怪には、親がいない。
妖怪は、親から生まれるのではなく、ただ何もないところから突然生まれる─────
高い、木々も枯れ、何もない山の頂上に、一人の少年がいた。
黒く短い髪に、背には黒い羽を生やしていた。
夜───だった。
少年は、ただ夜空の月だけをその美しい瞳に写していた。
その目の前に、巨大な龍が現れた。
山のふもとから、頂上までの長さを誇る巨大な龍───
「まだ、生まれたばかりか」
龍は、低い声で呟いた。
少年は、龍に目を向けた。
「そなた、自分のことが分かるか?」
龍の問いかけに、少年は笑って答えた。
「うん、分かるよ───僕、妖怪なんだよね?」
「そうだ…我は、龍然という……ここで会ったのも、何かの縁だ。そなたに、名をやろう」
「名?」
「名前には、力が篭っている。名前があれば、その辺りの妖怪よりも、はるかに強くなれる───人間が、なぜ子に名をつけるか知っているか?」
少年は、静かに首を振った。
「力で、子を守るためだ。名前がなければ、本当にあっさり死んでしまう。名に守ってもらう」
「そうなんだ」
「妖怪には、親がいない。だから、大体は名がなく、人間よりも脆い───そなたには、特別に名をやろう」
「うん」
「そなたの名は────だ。」
「ではな」
龍が去ろうとした時、少年は声をかけた。
「最後に教えて。僕は、何の妖怪なの?」
「そなたは、闇鴉────」
龍は、夜空に溶け込むように消えてしまった────
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