複雑・ファジー小説
- Re: 妖怪を払えない道士【千羅ちゃん頑張るぞ】 ( No.44 )
- 日時: 2011/07/24 15:25
- 名前: 王翔 (ID: WE9HHIFs)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第十六夜 前編
テガンという村に到着すると、リオとまいつ……ではなく、リオと古我が待ち伏せしていた。
長い金髪にカチューシャをつけているのが、エクソシストのリオで、黄緑の髪で
ちょっと変わったデザインの服を着込んでいるのは、勇者の古我だ。
この二人は、つっこみどころがありすぎて、つっこむ気が失せる。
なぜ、エクソシストや勇者が妖怪退治を倒すのかというところから、延々と続くことになる。
「遅かったじゃない」
リオが聖剣の手入れをしながら、こちらに目を向けた。
「ちょっと、迷ってな」
「そうなの?」
「迷子とは……お前ら何歳だ」
「黙れ古我」
「……」
古我が、闇鴉に目を向ける。
「何だ、それは」
「闇鴉だ」
私は、冷静に答えた。
「友達とやらか」
「そんなところだ。ある程度戦力になるからな」
「ふむ」
古我は、無表情のまま闇鴉を観察していた。
闇鴉は、相変わらずニコニコしているだけだった。
「ところで、まいつはどうした?日鞠、誘ったんじゃなかったのか?」
「それなら、さっき連絡があって、来れなくなったらしいのですよ」
日鞠は、着物には似合わないケータイ電話をみせびらかしながら笑顔で言った。
私は、ほっとして胸を撫で下ろす。
来ないなら、まともに戦えるだろう。
「ねーねー、まだ行かないの〜?」
能天気に闇鴉は質問してくる。
「そうだな。早く行こう」
「そうね」
龍然─────実物は、見たことがない。一体、どんな姿をしているんだろう…
龍の姿をしているとは、知っているが実物は見たことがない。
★
木々も枯れはて、何もないハゲ山を登った。
遮るものがなく、太陽の光が直接当たり、暑かった。
その代わり、普通の山とは違って足場は悪くないから、スムーズに登ることができた。
「ここ、久しぶりだな〜」
闇鴉が懐かしそうに呟く。
「来たことあるのか?」
「うん、何度かね」
「ふーん……」
特には気にせず、登り続けた。
闇鴉は、相変わらずニコニコしながらついて来る。
★
ようやく頂上に到着した。
「ここに、現れるはずよ」
リオが真剣な表情で呟く。
高いところだ……空がとても、近く感じる。
その時、目の前に龍の形が見えた。
幽霊のように、透けていたのだが、しだいにはっきりと姿を現した。
巨大な龍が─────
「我を殺しに来たか、人間……」
これが、龍然か。
龍然が天を仰ぐと大きな風が巻き起こる───────
「かかって来い。返り討ちにしてくれる」
龍然は、大きな咆哮を上げる。
「言われずとも……」
懐から、銃を取り出し、龍然目掛けて引き金を引いた。
ドン!
龍然の身体は頑丈らしく、銃を弾く。
「…どうするか」
そう呟いている間に、リオが聖剣を龍然に向ける。
そして、十字をきる。
「神よ、この悪しきものに罰を与えるため、力をお貸しください……」
聖剣が、白い光に包まれる。
「聖風!!」
聖剣から、白く輝く風が巻き起こり、龍然の身体を切り裂く。
「甘い…人間どもが。この程度で我は倒せん」
龍然は、雨を降らせた。空から、雨が大量に降ってくる。雷が鳴る。
これが、龍然の力……自然を操る妖怪────
「雷よ────打て」
龍然が低い声で呟く──────
「まずいっ……日鞠、防御結界を───」
「無理なのですよー……」
「は……?」
こんな時に、こいつ、何を─────
「太陽が見えないのです……」
暗い面持ちで呟く日鞠の言葉に、はっとした。
そうだった……日鞠は、太陽の道士だった。
太陽の見えないところで、力を発揮することはできない。
ドオオオオン!!
雷が、山に落ちる。
「……っ!」
何とか避けて、体勢を立て直した。
そして、呪文を唱える。
「母なる大地、我に力を、悪しき妖を断罪する」
銃の引き金を引くと、赤い光が龍然の身体を貫く。
「はっ!」
それに続いて、リオが聖剣で龍然を斬りつける。
「ぐっ……やるな、人間………」
龍然がよろめく。
「千羅、早くトドメを刺しなさい!」
リオに促され、銃を龍然に向ける。
これで、撃って、後は……闇鴉にトドメを刺してもらえば、終わりだ。
「早く殺せ……」
龍然は、大人しくしていた。
ふと、脳裏に疑問が浮かぶ─────
こいつ、本当に退治しなければならないほど悪い妖怪なのか………?
「お前───本当に、悪い妖怪なのか?」
龍然に、問いかけてみた。
「だから、甘いと言うのだ」
その瞬間、龍然の目が鋭く光った。
しまった、と思った時には遅かった。龍然の長い胴体が身体に巻きついた。
「くっ……!?」
まずい……絞め殺される………
「千羅!ちょっと、古我!見てないで助けなさいよ!」
リオが慌てて助けを求めても、古我は無表情で観察しているだけだ。
「ここで死ぬなら、それまでだったと言うことだ」
そう言えば、アイツはああいう奴だった。
人を助けることはない。
しかし、まずい……意識が遠くなってくる。
「こ、の……」
龍然の顔を見た時だ。
違和感を感じる───
こいつが、暴れているのは、こいつの意思なのか────?
ザンっ
龍然の胴体が切り裂かれ、私はぽとりとポイ捨てされたみたいに落ちた。
龍然の目の前には、闇鴉がいた。
「龍然さん、久しぶりだね─────」
闇鴉は、懐かしそうな表情で龍然に話しかけた。
「夜月──────お前は、随分変わった………」