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複雑・ファジー小説
- Re: 妖怪を払えない道士 ( No.5 )
- 日時: 2011/08/06 10:05
- 名前: 王翔 (ID: FAB9TxkG)
第四夜
太陽がギラギラ照りつけるなか、薄暗い森の中を散歩していた。
後ろからは、闇鴉がふわふわと宙に浮いてついて来ているが、できるかぎり振り返らないようにしていた。
木々が生い茂り、草花が咲き誇り、森の中は緑ばかりの良い景色だ。
妖怪退治の際に訪れる時は、こうしてゆっくり景色を堪能することもできない。
「……」
しばらく黙って歩いていると、ついに闇鴉が話しかけてきた。
「ねーねー、千羅ちゃん、見てよ。あの木、樹液がすごくおいしそうだよ〜」
「……」
私が返事をしなくても、闇鴉は上機嫌に話を続ける。
「あ、あと、あの花も甘そうだよねー。他には、草とかも意外とおいしそうかな〜、キノコもおいしそうだよね〜」
「……」
コイツは、森を食べ物の宝庫としか見てないのか。
ちょっと森の素晴らしさ(もちろん食用ではなく)について語ってやりたいと思ったが、堪えた。
とりあえず、闇鴉の語る森の素晴らしさ(食用として)については何も返事をせず、さくさく歩き続けた。
「ねーねー、千羅ちゃん」
「……」
「何か話そうよ〜」
「……」
返事もせずにいると、闇鴉が突然足を引っ掛けてきた。
盛大にすっ転んだ。
「何するんだよ!!」
「だって、千羅ちゃん返事してくれないからさ〜」
闇鴉は、にこにこと笑う。
コイツ……コイツに雷落ちればいいのに……
すぐに立ち上がり、さくさく歩き出す。
「ねーねー、千羅ちゃん」
「うるさいバカ」
ふと、足元を見ると巨大な足跡があった。
「これは……」
「熊さんじゃないよねー…この大きさは、あの人かな」
闇鴉が呟く。
「あの人?」
「森喰い獅子って妖怪、知ってる?」
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