複雑・ファジー小説

Re: 妖怪を払えない道士【第十九夜開始】 ( No.67 )
日時: 2011/07/28 19:18
名前: 王翔 (ID: HOcby127)
参照: http://loda.jp/kakiko/?id

第十九夜  序章




とある山奥の一軒家に、二人の男女がいた。
金髪の少年と触ると気持ちよさそうな猫の耳と尻尾がある少女だった。
二人は、一つのちゃぶ台を囲み、向かい合わせに座っていた。
「調子はどうですか、莉子(りこ)」
「うむ、今日も絶好調じゃよ」
猫少女は、可愛らしい外見に似合わないジジくさい喋り方をしながら無邪気に笑う。
「いやなことはない?」
「大丈夫なのじゃ、帝羅がよく来てくれるからの!」
「そうなんですか」
帝羅、と呼ばれた少年は安堵したような表情になる。
莉子はにこにこ嬉しそうに笑う。
チリンチリン……
彼女が喜ぶと同時に尻尾が揺れ、尻尾にリボンで結びつけられている鈴の音が響く。
「帝羅……そなたは、なぜ私のことが好きなんじゃ?私は、妖怪だと言うのに────」
莉子は、少し暗い表情で俯いた。
帝羅は莉子の手を握り、笑いかけた。
「人間だとか妖怪だとか、関係ないんです。僕は、莉子が妖怪でも人間でも、好きです。莉子は、僕が妖怪だったら好きには
なれませんか?」
「い、いや、そんなことはないのじゃ!」
莉子は、顔を赤らめる。
「私も、帝羅のことが大好きなのじゃ」
「そうですか」
帝羅は、莉子の頭を撫でる。
そうしていると、莉子が嬉しそうに尻尾を振る。
「……この頃、制御が効きにくいのじゃ」
莉子は、暗い面持ちで語る。
「いつも、山の荒らして……しまう。本当は、したくないと言うのに…………」
その時、外から声が聞こえた。

「出て来い、猫荒らし!」


「!」
「来たようじゃの。私もそろそろ潮時じゃな」
莉子は、名残惜しそうに立ち上がった。
「莉子……僕と逃げましょう。僕が、あなたを守ります」
「ダメじゃよ。私は、そなたを危険な目には合わせたくないのじゃ」
「莉子!!」
莉子は、すばやく出て行ってしまう。
「莉子……」
恐らくは、道士だろう。
莉子は、あまり強い妖怪ではないから、逃げ切ることは難しいだろう。
「何で……莉子は、制御できないだけなのに……」
帝羅は、目から涙を流しながら呟いた────



 
「平等じゃない───────」




その手には、金と銀の札が握られていた──────