複雑・ファジー小説

Re: 妖怪を払えない道士【闇鴉は能天気すぎ】 ( No.8 )
日時: 2011/08/06 10:08
名前: 王翔 (ID: FAB9TxkG)

第五夜


「森喰い獅子って妖怪、知ってる?」
「いや……」
 私は首を振った。
 道士と言えど、全ての妖怪を知っているわけではない。
 妖怪は数え切れないほどいてまだ誰も見たことがなく、知られていない妖怪もかなりいるだろう。
「森喰い獅子さんはね、その名の通り森を食べる妖怪なんだよ〜、大きな獅子でね、見た目はすごく怖いよ〜」
 闇鴉は笑顔で語り続ける。
「でも、森喰い獅子さんは、森の中のものしか食べられない。つまり、森を出てしまうと何も食べられないんだよ。森のなかなら、たとえどんなものでも食べられるけどね〜。あ、これね、現在森のなかにいる人も含まれちゃうからね」
 思わず難しい表情をした。
 つまり、今森のなかにいる私も含まれると言うことだ。恐らくは、闇鴉も……
 妖怪がいると聞いて黙っているわけにはいかない。
「探すか」
 私は、ポケットから札の巻きついた銀の銃を取り出した。
「あれー?千羅ちゃん、何で銃にお札なんか巻いてるの?」
 不思議そうに尋ねてくる闇鴉に対し、淡々と答えた。
「この札を武器に巻いて、呪文を唱えれば、力がなくても道術を扱える。と言っても、傷を負わせるだけで、妖怪を消滅させることはできないけどな」
「そうなんだー。トドメは僕に任せてねー」
 嬉しそうに言う闇鴉に対し、黙って頷いた。
 不本意だが、コイツに頼るしかない。
 その時、目の前の茂みが揺れる。巨大な、獅子が現れた。
 金色の毛に、真っ赤な大きな目……背には、黒い羽が生えていた。
 恐らく森喰い獅子だろう。
「道士カ、イマワシイ……」
 森喰い獅子は低い声を発した。
 私は銃を構える。
 その反面、闇鴉はにこにこしているだけで何も動きはない。
「我ノ、邪魔ヲスルナ。二度ト、邪魔ナドデキヌヨウニ、喰ってヤル!」
 森喰い獅子は、大きな咆哮を上げた。