複雑・ファジー小説

Re: スピリッツ ( No.2 )
日時: 2011/07/20 09:17
名前: ベクトル (ID: j553wc0m)

   
    第二話  「鞘(さや)」



少年が上を見上げると、上から二人の青年が降りてきた。
そして降り立った後、ジャリジャリと砂の上を歩きながら、少年に近づいた。

少年は何も威嚇も何もせず、ただ見ていた。

「はじめまして・・だな? 俺の名はレイ。心配するな。お前の敵じゃないさ」
レイは周りに倒れている兵士を見て、言った。
「お前を迎えに来た。」
「・・それ以上近づくな。」
少年は初めて口を開いた。

「心配しないで。本当に敵じゃないから。」
「・・・」
ホープが優しく声をかけたが、反応はなかった。

「なるほど・・わかったことが一つだけある。」
「なに?」
自信ありげな顔をしているレイにホープは尋ねた。

「基本・・無口だな。あいつ。」
「・・・もしかしてそれだけ?」
「うん。」
「・・はぁ。」
あまりにどうでもいいことに気づいたレイにホープはため息をついた。



「・・スピリッツ解放!!」
突然少年は叫び、激しい風と共に、少年から赤いオーラが出てきた。

「・・くぅ!! いきなりかよ。あいつ・・」
「たしかにセリアさんの言うとおり・・コントロールできてる。」
「・・始めようか。」
少年はもう戦闘態勢に入っていた。

「まちな。どうせ説明しなきゃなんねぇんだからよく聞け。」
「・・・」
レイは冷静に説明した。

「実は気になってたんだろ? 教えてやるよ。まず、お前が今やったのはスピリッツの解放・・つまり簡単に言えば特殊能力の始動だ」
レイは流れるように話を続けた。

「そもそもスピリッツってのは人の奥深くにあるかならずある力だ。まあ、それを使えるかは人次第だが・・」

「それが使える奴はこの世界で優位に立てる。それはわかるよな? ちなみにだが・・俺もこいつもそれができる。」
ホープを指さしてそういった。

「このスピリッツの解放を自分の意思で自由にできることを・・コントロールっていうんだ。最初からコントロールできる奴は少ない。大概は暴走してしまうからな。これくらいかな?」
レイは一仕事終えて、満足そうに言った。

「ちなみに特殊能力は人によって違う。たとえば僕は・・」
ホープは心を落ち着かせて・・
「スピリッツ解放。」
ホープから激しい風と、白いオーラが出てきた。

「・・ふうー。こんな近くで解放するなよな〜。」
「・・ごめんね。僕の特殊能力はいわゆるものまね・・コピーだよ。」
少年も青年が自分と同じような能力を持っていることに驚いた。

「僕は一度見た相手の能力をコピーできる。もちろん例外はあるよ。」
「俺の特殊能力は視力の上昇だ。・・ピンと来ねえだろ??」
レイはハハハっとのんきに笑った。

「君のはどんなの?」

「・・・・やればわかる。」

少年は腰につけてある鞘(さや=剣を収めるもの)を取り出した。

「・・鞘?? なにする気・・」
その瞬間に少年はホープとの距離を詰め、腹部を鞘で横切りに殴った。

「ぐあっ!!」
ホープは思わずひざまずいた。

「ホープ!! ・・いきなりかよ。」
少年はレイのほうに近づいた。

(・・速い!! こいつ・・。)
レイはかろうじてバックステップで攻撃をかわした。

「あぶねえ・・。ホープ!! 大丈夫か??」
「・・うん。」
ホープは立ち上がり答えた。

「こいつは完ぺきな接近戦のタイプだ!! 俺は距離をとる。」
「了解。接近戦は僕が引き受けるよ。」
レイは瞬時に距離をとり、ホープは構えた。

「僕が相手だよ。」
「・・誰だろうとかまわない。行くぞ。」


少年も鞘を構え、戦闘態勢に入った。