複雑・ファジー小説

Re: スピリッツ (戦争鎮圧編) 第14話更新! ( No.26 )
日時: 2011/07/25 10:13
名前: ベクトル (ID: j553wc0m)


  第15話  「孤独に生きた少年 過去編(アキト編) 前編」


このお話は、一人の少年「アキト」の記憶をたどった・・
「ナイツオブピース」に入る前の物語である・・。


少年はある貧しい村で生まれた。
そこはいつも薄暗く、不気味な空気を漂わせていた。
それは村のみんなが常に空腹状態で、元気がないのも一つの理由。
だがそれは理由のかけらに過ぎない。

大半は・・・憎悪。
この村は「レジスタンス」と呼ばれる団体に支配され、食料は決まった少量しか与えてもらえず、逆らえば・・・殺される。

そんな村で生まれた少年もまた、憎悪に満ちていた。
少年はいつも思う。
レジスタンスなんているから、この村は苦しむ・・。
レジスタンスを俺が全部つぶせれば・・・・・など。

そんなことを思い、いつもどうりの日常に変化がおとずれた。

「お前・・・強くなりてぇか?」
突然少年の前に現れた20代後半に見えるおじさんは少年に言う。
少年は迷わず頷く。
そのまっすぐな思いににこっと笑ったおじさんは、
「なら・・・俺についてこい。」
そう言った。

それからという毎日、少年は剣を持ち修行に励む。
時にはつらい修行もあった。
時には死ぬかもしれないといった修行もあった。
だがそれを・・・少年は一年間耐え切った。

そしてある日・・・
少年に異変が起こった。
少年の体が赤く光りだした。
少年は体が軽くなったように感じた。

「それが・・・スピリッツ。お前にとって大切な力だ。」
おじさんは少年に微笑んでいう。
少年は喜んだ。
これで・・村を救える・・と。


だが・・非常にも事件が起きる・・・・。

その数日後・・・
おじさんは少年を呼び出し、こういった。
「お前ではまだ・・あの村を救えない。」
少年は落胆した。
これを身に着けても・・救えないのか・・と。

「だが・・・これが最後だ。」
そういっておじさんは一粒の小さなカプセルを手渡す。
「これを飲め。そうすれば・・のちにお前はもっと強くなる。」
少年に笑顔が戻る。
「これを飲んで・・村を救ってやれ。」
おじさんはそういって手を振り、去って行った。

家に帰り、少年はすぐにカプセルを飲む。
少年はわくわくしていた。

俺が村を救えるんだ。
また笑顔いっぱいの村に戻るんだ。
そして・・・みんな平和のっ・・・!!

突如、少年は激しい頭痛に襲われた。
少年は痛みで頭を押さえ悲鳴をあげながら、ごろごろと転がりまわる。

なんだ!?
なんだ・・・これ・・・は・・?
俺は・・俺は・・・俺・・・・・は・・。

少年は意識を失った。

・・・と思ったら少年はすぐにまた立ち上がった。
いや・・そこにいたのは、以前の少年ではなかった。
赤い目をして、体から黒いオーラが漏れ出していた。

その姿はまるで・・悪魔だった。

少年は家にいる自分の家族を・・
躊躇なく剣で切り裂いた。

そして高らかに笑う。
ゲラゲラと不気味に・・・。

その後外を飛び出し無差別に人を切り裂いた。
そこを管理しているレジスタンス兵はすぐに駆けつけるが、簡単に斬られ、殺された。


人の断末魔は・・一時間で完全に消えた・・。
燃えさかる家。そしてそこらじゅうに転がった人の姿・・・。
唯一生き残ったのは・・・


意識を取り戻した少年のみ。

少年は言葉を失う。
何が起こったのか・・ただわかるのは・・

自分の剣に血がべっとりとついていること。
これだけで・・何を表すのかは十分わかる。

俺が・・・・殺した・・。
俺が殺した?
俺が俺が俺が俺が俺が俺が・・・・


・・・殺した。



「うわあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!」



ただ炎が燃える音しかしない村に・・
少年の叫びがむなしく響く・・・。