複雑・ファジー小説
- Re: スピリッツ (戦争鎮圧編) 第18話更新! ( No.32 )
- 日時: 2011/07/28 11:43
- 名前: ベクトル (ID: j553wc0m)
第19話 「戦火の町 後半」
「いい気味だ!! がはははぁぁ!!」
そういって笑うグロアに、
「グロアァァーーー!!!」
アキトは大声で叫ぶ。
「誰だ、小僧?」
「そんなことはどうでもいい!! どこに仕掛けた!?」
息を荒くして言うアキトの言葉にグロアは鼻で笑う。
「誰が教えるか、ばか者が!!」
「・・・くっ!!」
予想どうりの言葉にアキトは言葉が詰まる。
「・・ならどうしてこんなことをした?」
「・・・復讐だ!! この町は腐ってる!!」
アキトの問いに、グロアは強く言い放つ。
「俺は幼い時に右手を無くした。それを見た住人は・・俺を除け者扱いにしやがった!! ・・だから決めたのだ。俺がえらくなったら・・」
グロアは一瞬言葉を溜めて、
「この町をぶっ壊してやるってなぁーー!!!」
大声で言った。
「・・ふざけるな!!」
アキトは強く反発する。
「俺は・・・お前らレジスタンスにすべてを奪われた・・。お前らのやってることは・・この世界を破壊しているだけだ!!」
アキトはゆっくりと鞘を手に取る。
「来い、グロア。俺がお前らを・・・破壊する!!」
「でしゃばるな小僧がぁーー!!」
「スピリッツ・・解放!!!」
アキトはスピリッツを解放し接近する。
「死ねえええぇぇ!!!」
グロアはカニのはさみの形の大きな右手をアキトめがけて振り下ろす。
アキトはそれを鞘で受け止める。
「ぐうっ・・・!!」
予想以上の重い一撃に言葉を漏らす。
「はあああぁぁーー!!」
グロアは右手で横に薙ぎ払う。
アキトはそれを上によけ、グロアの頭に一発ぶちかます。
「ぐっ!! 軽いわぁぁーー!!」
グロアは一瞬よろけたが、すぐに態勢を立て直す。
「くっ・・・。」
アキトは考えていた。
時間がない。
鞘だけではこいつを倒すのは難しいだろう・・と。
アキトは剣を持っている。
だが・・一つの過去が引っ掛かり、剣を使えない。
どうすれば・・・
俺は・・俺は・・・。
「何をぼおっとしてやがるぅぅーー!!」
アキトははっと我に返り、グロアの攻撃を間一髪でかわす。
「ち・・・よけたか。」
「はあっ・・・はあっ・・・。」
精神的に追い込まれ、自然に息が切れる。
俺は・・・どうすればいい・・・。
「剣を抜けぇぇーーー!! アキトォーーー!!」
アキトの後ろから大きな声がした。
声の主は・・レイだった。
「レイ・・・。」
「今は人の死を考えるな!! 生きることを考えろ!!!」
「生きる・・こと・・・?」
アキトは聞くと、レイは微笑んで頷く。
「死んじまったら・・世界は作れねえ。生きるためには戦うしかない。なら今は・・そんな考え全部捨てて、がむしゃらに戦えアキト!!」
「レイ・・・。」
「人の死よりも・・・今は未来のために戦え。」
レイはにこっと笑顔で言った。
アキトは折りたたまれた剣を取り出す。
「そうだ・・・俺は・・生きて平和を作る!!!!」
「うるせえなぁ!!! 小僧がああぁーーー!!!」
グロアが攻撃を、鞘で左に受け流し・・・
「でえええぇぇーーーいぃぃ!!!!!」
剣で腹を切り裂いた。
「ぐぎゃあああぁぁーーー!!!」
グロアは倒れこんだ。
「・・・はあっ・・はあっ・・。」
アキトは真っ赤に濡れた剣を見て、言う。
「また・・俺はお前を必要とするかもしれない・・オメガ・・。」
血で汚れた二つ折りの剣、「オメガ」につぶやく。
「すまない・・・また・・よろしく頼む。」
アキトは愛用の剣「オメガ」をたたんで言った。
その後、結局町の爆発は止められなかった。
セリアさんの判断で、爆弾処理は断念し民衆を遠くに運ぶことを優先。
結局町は爆発し、跡形もなく吹き飛んだ。
たった一人、復讐に取りつかれた男と共に、町は消えた・・・。
「・・すまなかった。レイ・・。」
エアロバード内に無事戻ったアキトとレイ。
「気にするな。お前はよくやったよ。」
レイはポンポンと肩をたたく。
「今日は早く寝な。疲れてるだろうからな。」
レイは「おやすみ。」と言い、立ち去った。
レイの言うとおりだ・・。
俺は・・戦うために生きなきゃいけない。
そのために・・・たとえ血で汚れようとも・・。
でもやはり・・・簡単に振り切れる過去でもない。
レイの言った通り・・生きる時のために戦うときは、使う。
それ以外は・・やはりどうしても俺には人を殺せない。
その時までは・・眠っててくれ・・・オメガ。