複雑・ファジー小説
- Re: スピリッツ (VS七星!! 動き出す野望編) ( No.82 )
- 日時: 2011/10/25 22:01
- 名前: ベクトル (ID: j553wc0m)
第46話 「カムイ。」
体が・・・・動かない。
起き上がることもかなわぬ。
どうやら今頃になって、
ダメージが来たようだ。
・・・・無念なり。
我の願いもここで終わりか・・。
すまぬ、リイナ・・・。
「・・・!?」
身体が勝手に・・・起き上がる!?
いや、アキトが我を抱えているのか・・。
「・・何のつもりだアキト?」
我に情けを・・・かけておるのか?
それなら必要ない。
私は・・・もう彼女を救えないのだからな。
「アキト・・・・我に情けをかけてるつもりなら・・」
「違う。お前をまだ・・・救えていない。」
「・・・??」
何を・・・言っておるのだ!?
我は勝負に敗れた。
このまま死ぬと・・・そう覚悟していた。
これ以上何をしようと言うのだ!?
「カムイ。アキトは最初に言ったはずだぜ。お前を救うためにここに来たってなぁ。」
レイは斬られた傷をおさえながら、カムイとアキトに近づいていく。
「お前の大切な人・・・俺らが救ってやるよ。」
「・・・何!?」
レイの言葉にカムイは驚く。
「お前言ったろ? 俺を倒せぬやつに何が救える・・てな。じゃあお前を倒した俺たちは・・・お前を救えるはずだ。」
「・・しかしッ!!」
今まで敵として戦いあった者からの意外な言葉。
もちろん、先ほどまで本気になどしていなかった。
油断させるための口実とさえ思っていたのだ。
だが・・・彼らの口からの言葉は本気だった。
戸惑うカムイ。
だが・・・信じられずにいるカムイ。
本当は・・・助けてほしい。
それが本音だ。
だけど・・・・そうすれば自分も彼らも命が危ない。
(なんだ・・・・我は誰の心配をしておるのだ。)
自分と奴らは敵。
そんなことは分かっている。
でも・・・・・なんでだろうな。
お主たちには・・・死んでほしくないのだ。
自分のために命を無駄にしてほしくない。
理由は・・・分からない。
戦いの中で、我の気持ちが変わったのかもしれんな。
だから・・・・・・・・・・
「我は・・・・お主たちには・・・・・・・・」
「しかしも我もクソもあるか!! 俺らが救ってやるっていってんだ。おとなしく救われやがれッてんだ!!!」
「・・・ッ!!!!!」
レイの言葉が・・・カムイの心を揺さぶった。
今までにない何かがこみ上げてくる・・・。
「お前はもう・・・・・戦わなくていいんだ。」
「・・・・!!!!!」
レイがカムイに言い放った言葉。
カムイは確信した。
信じていいんだ・・・と。
そう思うとなぜか安心できた。
そして自然と・・・涙が出た。
溢れて止まらなかった・・。
「・・・すまぬッ・・!!!!」
ただこう言うしかなかった。
それを聞いたレイはフッと笑みをこぼし、
「お前の未来は、俺らがかならず作ってやるよ。」
そう言い放った。
そうしてると・・・
「・・・・来たみたいだな。」
カムイを抱えたままアキトは言う。
「・・?」
「もう一人の仲間が準備を終えて迎えに来たみたいだぜ。」
訳が分からないカムイにレイは少し苦笑いしながら、
「脱出だぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
そう叫ぶと同時に・・・・
ピーーー!!!!!
と鳴り響く警報機。
「なッ・・・・!? 何が・・?」
「・・・カムイ。今から言うことを驚かずに聞け。」
「アキト・・? お主・・・」
「今からこの船は・・・・墜落し粉々になる。」
アキトの言葉からとんでもないことを聞いたカムイ。
「墜落とはどういうことだ!?」
「カムイたちを・・・・死んだことにする。」
「・・?」
アキトの言葉の意味をいまいちつかめないカムイ。
そりゃそうだ。
いきなり墜落やら死んだことにするやら・・・訳が分からない。
「お前たちが死んだことになり、俺らが独断でお前の大切な人を救ったとなれば・・・・レジスタンスはお前も彼女も追ってこないはずだ。」
「・・・。」
アキトの説明に言葉を失うカムイ。
確かに・・・・それなら彼女を救えるかもしれない。
「俺らの指揮官に・・・感謝するんだな。あの人は天才だからな。」
レイはニコッと笑って言う。
「・・・レイ。アキト。お主らは・・・・」
「おおっと。話はあとだ。まずは脱出だっ!!!!」
レイがそう言っていると、
「レイ、アキト!! 待たせてごめんね♪」
リフィルが司令室の入口から飛んできた。
実はリフィルは今までずっとキングジョージ内にいたのだ。
だが彼女は、セリアの命令で他のサムライ隊のメンバーを説得し、キングジョージにある緊急の小型船で地上に避難させていたのだ。
サムライ隊はもともとカムイと一緒だった。
戦いたくなかったのだ。
だが、昔からの仲間であるカムイの願いのためを思い、いままで戦っていたのだ。
だから、もう戦わなくていいんだと説得すると、彼らは快く避難してくれた。
なぜなら彼らはカムイの大切な人を救えたなら・・・
もう戦う必要もなくなるからだ。
そしてみんなが避難した後、起爆装置を発動させ、ここまで来たということだ。
「リフィル!! グットタイミングだ!! 早いとこ俺らを連れて脱出してくれ!!!!」
「了解♪」
「僕も大丈夫だよ。」
「ホープ!? 大丈夫か!?」
レイは心配そうに聞く。
いつの間にかホープは目覚めていた。
ホープはアキトたちに近づき、にこっと笑って、
「心配しないで。僕もちゃんと活躍しないとね。」
「・・・無理すんなよ?」
「レイに言われたくないね。」
「何ィー!? ・・・あ、やべ。」
レイの体がだんだん傾いていき、地面に倒れる。
「・・言わんこっちゃない。無理しすぎ。」
ホープはレイを担ぎ、風の力で宙に浮く。
「さっ。脱出だよ。」
「オッケー♪」
リフィルはアキトとカムイを担ぎ、ホープはレイを担ぎ、急いで飛び立つ。
キングジョージを抜け出し、エアロバードに向かって飛んでいく。
キングジョージは派手な音とともに爆発する。
破片が星のように地上に降り注いだ。
その爆発音はまるで・・・・・
一人の男の戦いの終わりを告げているようだった・・・・。