複雑・ファジー小説
- Re: 悪夢に喰われた現実 ( No.13 )
- 日時: 2011/08/11 17:19
- 名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: 0M.9FvYj)
少女はやっと意識が戻ったらしく目をぱちぱちさせている。
少女は何故こんなところへいるのか、まだ状況整理ができずオドオドしている。
陽也も、もう料理を作り終わるところだった。
少女は布団から出ると、何だかいい匂いがすることに気がついた。
そして本能がままにその匂いの道しるべを辿った。
「お……?起きたか?」
「…………………誰」
「まあ、お互い赤の他人だ。けどせっかくだからカレーでも食っていかないか?」
「カレー……?」
どうやら先ほど陽也が作っていたのはカレーだった。
しかし少女はカレーというものを見たことをないらしい。そのため動物のように、
異様に警戒をして匂いを嗅いだり、指でカレーのルーを触ってなめたりして警戒を解いた。
そして小さな口から言葉を紡いだ。
「………食べてもいい?」
「だからいいって言ってんだろ?遠慮すんな」
そしてカレーの皿を二人前お盆に乗せてゆっくりと広間のちゃぶ台へ運ぶ。
少女は表情こそ変わらないものの挙動だけで興味津々なのもわかった。
カレーをさっきからジーッと見ているしカレーを指で触ってつまみ食いもしていた。
ほほえましい。何か見てるだけで笑顔になれる。
そんな感じがした、こんなにほのぼのしているし。
「(それに比べて一年一組は、戦争や乱闘が日常茶飯事なんてな)」
そんな事を心底思いながら座布団の上に座った。
お盆からカレーの皿を降ろして少女と陽也の前にカレーを置く。
少女は何故か両手を合わせていた。数秒もして何をするか感づいたので、
陽也も両手を合わせた。そして二人で声をそろえてこういった。
「いただきます」
少女はいただきますと言った直後にもうカレーに食いついていた。
黙々とカレーを口に放ってゆく。陽也もゆっくりカレーを口へ運ぶ。
「おい、ちょっと顔貸せ」
「……何?もしかして……くちづ」
「やるわけねえだろ!?初対面の人にそんなことやったら変態だろ!……顔にカレーが付いてるんだよ」
そして陽也は片手で顔を支えてもう一方の手でカレーのルーをふき取った。
しばらく沈黙が続いたがカレーを二人が食べ終わってから、
陽也が少女に話を切り出した。
「そういえば、お前名前は?俺は都部陽也、宜しく」
「………夢見アリス。宜しく」
簡単な名前の自己紹介を済ませて続けて陽也は質問をする。
「アリス、お前何で俺ん家の前に倒れてた?」
「……この家の前で?………追っ手から逃げてて疲れた」
「いやいやいや、ちょっと待てよ!お前、寝てたのかよ!」
とっさに突っ込み精神がはたらいて適格な突っ込みを入れる。
しかしアリスは小動物のように小首を傾げるだけであった。
しかし心残りな言葉が一つあった。
『追っ手』
追っ手という事はアリスは只者ではないのが分かるような気がした。
何にどんな原因で追われているかというのは知ったこっちゃない。
しかし、アリスには誰かが狙うほどの何かがあるという事だ。
こんな重大な事を聞いて俺は何をすればいいのだろう。
俺も一緒に巻き込まれてしまうこともあるのだろうか。
しかし今はまだ分からなかった。
「アリス……。留守番できるか、朝ごはんの弁当買ってくる」
「………私も行く。夜歩きはいけないから」
「わかったよ。ただし何かねだったりするなよ」
「うん、わかった」
そして二人は身支度をして近くのコンビニへと向かった。
今、二人には悪しき影が忍び寄っていることも知らずに。