複雑・ファジー小説

Re: 悪夢に喰われた現実 ( No.14 )
日時: 2011/08/12 09:50
名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: 0M.9FvYj)
参照: 急展開。


二人は夜道をためらいなくのんびり歩いていた。
陽也は今まで数えられないぐらい、夜に弁当をコンビニで買っているので、
こんな夜道でも慣れていた。逆にアリスはあんな事を言っていたにも関わらず、
肝試しで怖がる女の子のように陽也と腕を組んで体を寄せていた。
別に陽也はそんな事はあまり気にしていなかったので、顔を赤くするという事はまずなかった。
陽也はまたアリスに質問をぶつけた。

「アリス、無理なら答えなくてもいいんだが……。お前は何処から来たんだ」
「夢」

まあ、陽也はまともな答えを期待していたわけではなかったのだが、
今の答えは予想外だった。まさか『夢』から人が生まれるなんてことはないだろうと思ったから。
しかし追っ手に狙われているというぐらいなのだからこのぐらい珍しくてもおかしくはない。
ただ、未だにその言葉をしっかりと理解できなかったためもう一度確認を取った。



「アリス……、ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」


アリスは口数が非常に少ないため、アリスに質問をあててもいい答えが返ってこないため、
一度質問をあてるのをやめた。そしてしばらく歩いているとコンビニほのかな電灯の光が視界に入った。
現在時刻は大体9時なのでコンビニに長居すると補導もされかねない。
なので、無駄な行動を減らして早めにコンビニを出ることにした。
まずは店内へと入った、そして決まって店員のいらっしゃいませという声が聞こえた。
アリスはご丁寧にお辞儀をしているが、陽也はもちろん弁当売り場にすぐ向かっていた。

「あ〜、何にするか。牛丼弁当……、いやカロリーもあれだし濃いから駄目。今日は惣菜パンとおにぎりでいいか。アリスは何食べるんだ?」
「………選んでいいの?」
「いいよ。じゃなきゃ飢え死にするぞ」
「…………じゃあこれがいい」


アリスが掴んできたのは牛丼弁当だった。
陽也は数秒沈黙してしまった。一応もう一度確認を取る。

「………本当にこれがいいのか……?」
「うん」
「駄目。絶対」
「じゃあこれ」
「……。あー、もういいよそれで……」


挙句にアリスが買ったのはオムライス弁当という今風な弁当だった。
何だか朝ごはんとしては不向きな気がしたので一応ためらったが、
アリスが考えを変える気配が全く見えなかったので結局買ってしまった。
まあ、予算的な問題はないので問題はないのだが。
そしてコンビニを出て、さっき来た道をそのまま逆から辿っていた。
陽也はこの時変な感じがした、こう感じたことのない鋭い気配を。



その時。


「!!アリスっ、伏せろ!!」
「……何で……、……!?」

すると真上に何か、大きなものが横切った。陽也は第六感のようなものがはたらいたのか、
この攻撃が分かったらしい。何故か空も微妙だが薄い透き通った赤に染まっている。
そして前を見るといたのは今朝の不良。
だが、一致しない。何が一致しないのかというと戦争組と戦っていたときは、
さっきのような不思議な攻撃を出来なかったから。


「よお坊主。仕返しに来たぜえ」
「何の用だ、返り討ちにするぞ」
「そんなことが本当に出来ると思うかあ?降参ならしてもいいぜ、その代わり女を渡せ。その女を捕まえるように頼まれててな」
「降参もしねえし、こいつを渡すなんてこともしねえよ」

不良共は陽也の落ち着いた態度に腹を立てているのか舌打ちをチッとした。
不良は何故か勝ち誇ったような笑みをしていた。陽也にはそれが理解できなかった。
そして不良は他の不良達に近所迷惑になるような掛け声をする。


「うざったらしい坊主が、おい野郎共ぉ!この調子乗った坊主を殺せぇええ!」
「うおおおお!」


これは現実なのか、幻覚ではないのだろうか。
さっきの不良達は狼男のように体が変化していた。
獰猛な牙、目。そして綺麗な毛並み。まさしく狼だった。

これだったら一応さっきのも説明がつくような気がする。
不良の一人が狼へ変身して凄い速さで上を横切った。
こんな説明なら間違っている気はしなかった。
しかしまずい。この状況はまずい、そんな気がした。
それでも、自分が無力だとしても少年は不良達に立ち向かった。
アリスという独りの少女を守るために。