複雑・ファジー小説
- Re: 悪夢に喰われた現実 ( No.17 )
- 日時: 2011/08/12 19:56
- 名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: 0M.9FvYj)
「おい、お前寝てんじゃねーぞ。おい!」
「………はっ!?アリスは!?」
気がつくとそこは今朝見た夢の中だった。全て真っ白すぎて距離感を掴むのが困難な空間。
そして聞き覚えのある声は夢喰いの声だった。だが夢喰いの姿は見えなかった。
しかし何故不良達と戦っていたのにこんなところにいるか。
思い返せば陽也は不良に痛恨の一撃を喰らって思い出す。
ただ、腹部を見ても傷がない。陽也の頭にははてなマークがたくさん浮かんでいた。
一応その状況がしっかり理解できている夢喰いは簡単に状況説明をした。
「お前腹に怪我してたのに何で傷一つないかって気になってんだろ。まず、お前の腹に傷がないのはここが俺の空間だから」
「………夢喰い。お前、今からする俺の質問に答えられるか?」
「別にいいぞ、気になってんだろ。何で不良が狼になったのか」
夢喰いはその場の検証者のようにピタリと物事を当てる。
その様子を見て、陽也は少し驚いた。その事については陽也がとても気になっていたのも事実。
陽也はゆっくりと首を縦に振った。すると自信気に夢喰いは語り始めた。
「ありゃ『夢の力』だ」
「『夢の力』?なんだそれ」
「まあ『夢』という空間で使える特殊能力だ。『夢』の空間の見分け方は空の色が薄い赤になるから。んでもって、その能力を自由自在に使えるのが『創造主』」
「じゃあ、あの不良は元々『創造主』だったってことか?」
陽也は夢喰いの言ったことを少しも逃さず耳に入れた。
そして疑問に思ったことをバンバン口にしてゆく。
「……いや、あいつらは違う」
「何で分かるんだ」
「あいつらは狼に変身したりする夢の力だろ?それにしては使いこなせてないからだ、狼って言ったらあんな奴等よりもっと利口だろう」
「ん……、ま、まあそ、そうじゃないか………?」
「でだ、普通なら集団で連携攻撃したりするだろ、利口なら。だけどあいつらはバラバラで単体攻撃しか仕掛けてこなかったろ。それが証拠だ。まあ実力があるなら別だが」
意外にも説明が上手かったため、つい驚いて感心してしまった。
すると夢喰いが改まった顔で話を切り出してきた。
「今度は俺からの質問だ。お前、今何のために戦ってた?」
「そりゃ、大切な人を守るためだ」
「………お前はそいつと会ったばっかだろ。何で命をかけられる?答えろ」
そこでしばらく沈黙が続いた、夢喰いは諦めて適当に話題をそらそうと思ったがやっと陽也が口を開いた。
「…………大切な奴だからだ」
「お前、何で軽がるしくそんなこt」
「軽々しくねえよ。確かにアリスと俺は今日会ったばっかりだよ、けど俺からすればもう打ち解ければ皆大切な奴だ。もちろんアリスもな」
「………はっはっは。おもしろいなあ、お前!」
何だかとてもご機嫌そうな笑い声を空間に響かせていた。
陽也はついその態度に対して文句を言ってしまった。
そして笑い声がやっとの思いで止まると、夢喰いがこんな話を持ち出してきた。
「けど、今のお前には大切な奴を守る力がないと」
「…………自分でもどうすればいいかわからないんだよ……!」
「……お前、俺と契約しないか?」
「は?」
陽也は耳を疑った、契約をするという事は陽也に力を貸してくれるという事だから。
「だから、俺と契約して大切な人を守らないかって事」
「……いいのか?」
「条件付きだ。俺の目的にも協力しろって事だ」
「………やってやるよ、約束だ」
「お前は俺の『悪夢喰らい(ナイトメアイーター)』を身に宿すことになる。ただ、覚悟がなきゃこの力は使えねえ。さあお前はどうする?」
陽也は少し間を開けて言葉を紡いだ。その言葉には魂が宿っていた。
「俺はアリスを守りたい。だから力を貸してくれ!夢喰い!!」
その覚悟を見て夢喰いは少し動揺を見せた。
こんな人間を見るのは初めてだと夢喰いは思った。
そして夢喰いは言葉を紡いだ。
「お前の覚悟がヒシヒシと伝わったぜ。………契約完了だ。さあ戻るぞ、お前の大切な奴のところへ」
「ああ」
そして再び戦場へと陽也は戻ってゆく。