複雑・ファジー小説
- Re: 悪夢に喰われた現実 ( No.3 )
- 日時: 2011/08/07 11:17
- 名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: 0M.9FvYj)
少年はとある事情で海外に両親がいるため隣のおばさんの力を借りて、
木造建築の平屋で一人暮らしをしていた。
ジリリリリッと目覚まし時計がその鳴き声を部屋中に撒き散らす。
その鳴き声を気にも留めずに少年は静かに眠っていた。
そして寝ぼけて目覚まし時計の鳴き声をボタンで止めた。
この時は幸せの絶頂に少年はいただろう。
寝るというのは人の幸せの一つであるから。
しかし少年は後悔する事となる、寝ていた自分への甘さに対して。
少年はしばらくしてゆっくりとまぶたを開く。
そして少年は何かに気がついたようにバッと掛け布団を投げ捨てて、
隣においてあった目覚まし時計の針が差している時刻を確認した。
少年は目を疑った、夢かもしれないので頬も思いっきりつねった。
それでも真実は変わらない。
7時50分を二つの針が差していたという真実は。
少年の学校の登校完了時刻は8時15分。25分で身支度をして家を出て学校に着く事。
それは不可能であった。
「遅刻だぁぁぁああ!!」
少年は現役中学一年生だが厨二病というわけでもない学生だ。
名は都部陽也。テストで十位以内に入っている一応秀才だ。
しかし今、彼は夜更かしを前日したためか寝坊をして通学路を自転車で風となって駆け抜ける。
いや、迷惑な暴風となって歩道や車道を駆け抜けた。
やっと陽也が通っている城野中学校の校舎が見えてきたところで不良がボイコットしているのか、
道端に広がって屯っていた。常人ならそこは別の道を使うのが無難だと思う。
しかしここは坂道で、さらに遅刻寸前の陽也に進路変更などの余地はなかった。
「どけどけどけぇええ!!邪魔だああ!」
「おうおうおうぅ!どこの面下げてそんな事いってんだ坊主が!」
その坂を見事突破する事が出来たものの不良軍団に追いかけられる羽目になってしまった。
けれど後ろを見向きもせず、ただ自転車を飛ばしている。
今の最優先事項は遅刻をしないことだったから。
「待ちやがれっ!坊主!!」
「無理っ!絶対無理!」
「じゃあスピード落としやがれ!」
「それも無理!」
「落としやがれ!」
「しつこい!」
そんな一生ループしそうな会話を繰り広げながら自転車をこいでいる。
そしてふと前を見るといつの間にか校門の目の前にいた。
校門から見える時計の針が差していた時間は8時10分。
ぎりぎり登校完了の8時15分に間に合ったようだ。
そして陽也は最後、全力でペダルをこいだ。そして颯爽と校門を潜り抜けた。
——————————不良と共に。