複雑・ファジー小説
- Re: 悪夢に喰われた現実 参照200突破です。 ( No.43 )
- 日時: 2011/10/08 22:59
- 名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: ZD9/Y1q1)
「ああっ、もう頭が痛い………」
「ハッハッハ。まあそう悩むなよ、まずは和解しようじゃねえか」
と、陽也は若宮の独特なテンションと言動に頭を痛くしていた。
若宮は相変わらずの調子で陽也に気さくに話しかけている。
何故こうなったかといえば若宮が『夢』についていきなり語り始めたのが始まりで、
今、ぐだぐだな展開で話が進展していないという状況下に置かれている。
すると若宮はあまりにも唐突なタイミングで言葉を放った。
「あー、そこ誰かいないか、ベッドの下のところ」
「………もう出てきていいぞ、アリス」
「うん」
と言ってもぞもぞと小動物のようにベッドの下から顔を出す。
陽也もさっきあれだけの事を言っていたのだから、まあ分かるよなというノリで呆然としていた。
そして若宮はその拍子に言葉をマシンガンのように打ち出す。
「そうそう、自己紹介入れておくか。俺は若宮紀正、この『夢』に巻き込まれた『創造主』だよ。以後宜しく」
「俺は都部陽也、こっちが夢見アリス。宜しくな。……ふーん、だから『悪夢喰らい』の事を知っていたのか………」
「『悪夢喰らい』?」
「俺の能力っていえば能力だ、人からもらったものだけど。これは『夢の力』を無にできるって奴だよ」
「へえ、そうなのか。知らなかったな」
さすがの若宮でも夢喰いが陽也に伝授した能力に関しては無知であったらしい。
若宮は俺の話を興味深そうに相づちを小まめに打って聞いていた。
まあ実際のところ陽也も詳しい事は知らないのでしっかりとした説明は出来なかった。
すると陽也は心の中にあった質問を若宮に投げ出した。
「そうだ、若宮君さ。っていうか呼びにくいから呼び捨てでいいか?」
「まあ自由にしていいぞ」
「で、若宮。率直に聞くがお前の能力は何だ」
まあ、その一言は極普通だった。何故かといえば人の力、人の手の内を知りたいのは当たり前という原理と同じだからだ。
例えば、カードゲームで普通は見れないが見たいという事があるかもしれない。
多分それは不安、心配から生まれる感情が発端となって、
相手の手の内を知りたくなるという事であろう。
結局率直に言えば人間、手の内が知りたくなるのは当たり前という事だ。
若宮は無言でニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていた。
さすがの陽也も若宮の態度が腹ただしく感じられたらしく、
怒号が噴火寸前だった。そして陽也のリミッターもとうとう外れ怒号をかました。
「おい、若宮!!お前いい加減に————————」
突如前進に悪寒が走る。その影響で一瞬陽也は静止してしまった。
隣にいたアリスもそれを感じていたのか体をビクビクと震わせながら怯えている。
二人が同時に感じたのはとてつもない重圧。
漫画に出てくるようなラスボスのような強さの奴を前にした時ぐらいの重圧。
つい三秒前ぐらいまではこんな感覚はなかった。
ならば何が起こったのか、それは二人共分からない。
二人が目の前にしているのは若宮、自分と同じ子供なのに。
威圧感に圧倒されているなか、若宮はこう軽い口調で言い放つ。
「まあ、俺等も中学生なんだし無理は禁物だ。気楽に行こうぜ、都部。じゃあな」
若宮はその後なにも言わずに病室を後にした。
その病室ではまだ陽也とアリスが立ち尽くしていた。
第二章 完。