複雑・ファジー小説
- Re: 悪夢に喰われた現実 第三章 ( No.44 )
- 日時: 2011/10/08 23:04
- 名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: ZD9/Y1q1)
- 参照: 坂下さん、登場!サディストとかあんまり扱い方が分からないが勉強勉強。
———————————若宮と陽也が竜虎相対した日。その日から一週間が経った。
陽也はもういつもの木造平屋に戻っており、休日の早朝は誰にも邪魔されず満足げな顔で眠っていた。
やっと前日に医師に退院許可をもらえ陽也は一目散に病院を抜け出して家の寝室ですぐ眠りについたという。
余程病院が窮屈だったらしく、昨日はガッツポーズをとるほど喜んでいたらしい。
そしてしばらく経ち陽也はやっとの事で快楽な睡眠から目覚める。
陽也は目を覚ますため軽く伸びをして体をほぐした。するとすぐに他の服に着替えを始める。
これは買い損ねた弁当を階に行くためにジャージに着替えたのである。
まだアリスも寝ておりまだ6時前なので余裕があった、なのでサイクリングをしながらでコンビニまで行くことにした。
まだ日のほのかな光は姿を現しておらず薄暗い霧に包まれた道を自転車でゆっくりと進んでいる。
朝の冷えた風は案の定肌寒く、ちょっとだけ鳥肌が立っていた。
今の危険で謎に包まれた現実からの現実逃避には十分なくらいだ。
しばらくして陽也はピッチを上げて風となって道路を駆け抜ける。
すると霧の中に少女が見えるのに気がついた。が、もう7mぐらい迫っていたのでとっさの判断でブレーキを掛ける。
そして少女に対して全力で叫ぶ。
「危ないぃぃぃいいい!!」
「えっ、わあ!」
何とか自転車は少女の目の前で止まった。陽也は安堵して大きな溜め息を吐く。
しかし陽也はそれどころではない事に気づき自転車から降りて頭を下げた。
「ごめん!!ちょっと霧で前が見えなかったんだけど」
「あ、はい。ていうかジャージってナンセンスな気がするんですけど」
「そこ?それって気になるの?」
と陽也は頭に疑問符をいくつも浮かべていた。けどさっきから少女はあまり感情の変化が無いように見える。
「あ、私は坂下狢っていいます。後ついでに雪原女学院付属中の一年です」
「俺は都部陽也、城野中の一年だ。雪原ってとなり町か」
お互いに軽い自己紹介をして話題を広げた。しかしさっきから坂下は一向に表情を変えていない。
一種のポーカーフェイスという奴なのだろうかと陽也は心の底で思った。
周りは個性が強い奴等が多いためなのか、とも思っていた。
すると坂下は突然こんな事を訊いてくる。
「あの……、オルヴォワ……意味分かりますか?」
「お、オるヴぉわ?」
「まあ知らなくてもおかしく無いですよね」
坂下は少しだけ形だけだが愛想笑いをしている。
けどやはり心だけは笑っていないのが一目瞭然だった。
陽也はその事だけ気になっていたのでそれについて尋ねようとした。
しかし、偶然にも「あっ!」っと甲高い声を上げる。
「すみません、ちょっと今日は用事があるので。じゃあジャージさん。ありがと」
「都部だよ、都部だからな。覚えろよ」
凄く素っ気無い会話だけ交わして二人は違うところへ進んだ。
まだ気づかない、これが一つの事件へつながる切っ掛けの始まりだと。