複雑・ファジー小説
- Re: 悪夢に喰われた現実 ( No.7 )
- 日時: 2011/08/10 13:09
- 名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: 0M.9FvYj)
陽也にはどこかやりきった顔をしていたが、後ろを振り向いて唖然とした。
さっきの不良が校内まで追いかけてきていたのだから。
陽也は三つの選択肢があった、一つ目は『先生を呼ぶ』、
二つ目は『逃げる』、三つ目は予想外の物だった。
一度自転車を校内の駐輪所へ止め、溜め息混じりに呟いた。
「はあ、仕方ない。……やるか」
と、言いながらも昇降口へと全力で陽也は逃げた。
もちろん不良共はそれを見逃すわけもなく昇降口へ転がるように突っ込んでいく。
下駄箱で素早く上靴に履き替えて階段を駆け上る。
一年生の教室は三階に四クラス設置されており各々のクラスは何処も突出して個性的である。
特に陽也のクラス一年一組では。
階段を全て駆け上がったところの目の前に一年一組の教室があった。
そして教室のドアをガラガラと開けた、クラスは少し乱れていて共々の笑い声や喋り声が良く聞こえた。
しかし彼らにまとまりがない、という事でもなかった。
「よおっ、陽也。なんとなく疲れてるっぽいけどどうした」
この少年の名は三廻部隆太郎。愛称は『りゅう』で城野中で有数の、頭の上で赤毛を纏めている美少年である。
しかし、それと同時に実は極度のオタクである。ゲームに関しては、
大人に混じって格ゲーの全国大会で小学生時代、準決勝まで上り詰めた猛者である。
しかし、この事実を知っているのは隆太郎の友人のごく一部しか知らない。
そのため女子が隆太郎の周りには毎度の如く集っていた。
「今、三階に他校の不良が駆け込んできてんだよ。…また乱闘するか?」
その瞬間、クラスの半分がピクッと動いた。
そして隆太郎もいつの間にか目つきが変わっていた、まるで猛獣のような目だ。
ドアの前にいた隆太郎は、教室側を向いてこう叫んだ。
「行くぞ、野郎共ぉおおお!」
「うぉおおおおお!」
そして一斉に一つのドアから戦場へとクラスの半分の人は駆けていった。
残った輩はそれぞれ溜め息を吐いたり、特に動じなかったりと行動は様々だ。
これが一年一組。まとまりがない様に見えて、結局全員が一つにまとまっている訳ではなかった。
その中、陽也は一つの女子に目がついた。
「おーい、行かないのか。乱闘始まってるぞ、怒田」
「いや〜。朝っぱらから眠いから今日はパスだ〜」
この少女は怒田佳奈美。運動神経抜群だが阿呆の代名詞とも言われている茶髪の短髪少女である。
いつもなら戦争組に入っているはずなのだが、今日は怒田自身が言っている通り、
眠いという単純な理由で戦線離脱しているらしい。
陽也は特にやることも無いので、戦線の状況を見に行くことにした。