複雑・ファジー小説
- Re: 悪夢に喰われた現実 ( No.8 )
- 日時: 2011/08/10 20:34
- 名前: イカ飯 ◆7dc6rjLZUg (ID: 0M.9FvYj)
- 参照: 本格的に始動。
陽也の予想だと階段の辺りに戦争組がいるらしい。
自分の予想を信じて陽也はガラッと教室のドアを開けた。
……予想通りだった。
目の前に広がるのは某ロープレのスーパーハイテンションな状態になっている一年一組の戦争組。
そしていきなり部外者がわんさか自分達に襲ってくる状況を全く読めない不良。
むしろ見てる側の方が全く状況が読めないだろう。
「くらぁあああ!超ウルトラスーパーベリーベリーストロ●リークラッシャー!!」
「負けるぅぅぅかぁあああ!とんでもスターデンジャラスロッキー●ード!」
「いやいやいや、お前等技名おかしいよ!?適当に単語付ければ言い訳じゃないし!そして、ちょっとアイスクリーム店に頭下げて来い!」
もういつの間にか不良側も戦争組の空気に馴染んで彼らもスーパーハイテンション状態へとなっていた。
そして暴走列車と化していた奴等にすかさず陽也は突っ込みを入れた。
陽也は突っ込み役として生きてきたためかその手のものには慣れているらしい。
しかしその渾身の突っ込みはあっさりとスルーされてしまった。
ここまでヒートアップした戦場を止める方法など殆どなかった。
一応一つだけあるのだが。
ドゴォォオオオン!それは何かが粉砕された音であった。
陽也はいつの間にか教室に戻っており代わりにいたのは黒き長髪の眼鏡少女。
名は、稲荷木京菜。黒髪のストレートヘアで超頑固風紀委員の異名を持っている。
真面目で冷静な性格とは裏腹に超怪力の持ち主で立場的には陽也の幼馴染である。
今、彼女の眼鏡の奥から見えるその瞳は紅を象徴するように怒りを纏っていた。
一斉に戦争組も不良もその少女の方を向いた。
「貴方達……。もし頭蓋骨割られたくなければ今すぐ喧嘩をやめなさい」
「いや、喧嘩じゃな……」
「やめなさい」
少女が脅しに近い止めに入ると、隆太郎がその鬼のような態度に戸惑いながらも反論しようとした。
しかし反論中に、意見ごと遮られて沈黙がしばらく続いた。
そして戦争組は皆一礼して教室に一列で戻ってゆく。
不良組は全員稲荷木の手によって先生に突き出された。
それより何故こんな大波乱で些細な問題のように片付けられるか。
それは城野中の校長、城野正一の方針。
『生徒のことを第一に尊重し、自由を与える』という珍しいにも程がある方針である。
生徒には大反響だが、先生の中にはその考えを好まない人もいるらしい。
今回のこれも自由の一つであるため別に大きく取り上げられたりなどされなかった。
「ねえ、都部。貴方は喧嘩に手を出してないでしょうね?その場にいたけど」
「んな訳あるか、俺は自分に忠実に突っ込み役をしてただけだ」
「自分でそう言うのね。あ、もうホームルームの時間だし、それじゃあ」
小さく笑い、それだけ言って稲荷木は席に向かった。
陽也はいつも通りに日常を送っていた。皆もそうだった。
しかしこの日常が崩れたらどうなるのだろうか。
もう一度、同じ方向に世界は回りだすのだろうか。
実際そんな悪夢のようなことが起きるのは確率として千分の一にも満たない。
しかし今。この世界は破滅へと着々と向かっていた。
だがこの事実を知っている者は一人以外誰も知らない。