複雑・ファジー小説
- Re: 神々の作り上げし世界とか (仮 ( No.3 )
- 日時: 2011/07/31 15:42
- 名前: 海底2m (ID: u3m1DqCX)
第一章
第一話 「神とか…いるわけねーじゃん」
「って聞いてんのか五十嵐!!」
心臓を貫く罵声で、五十嵐勇は教科書に突っ伏していた頭を跳ね起こした。
「はいっ、聞いてます!」
ちっ、せっかくいい心地だったのに…と、胸奥で愚痴りながら、勇は声を張り上げた。
「そうか?じゃぁ今何ページか言ってみろ」
「え、えーと…」
教官のたしなめるような口調に反抗しようと、勇は教科書のページを確認した。が、
「教官、こいつの教科書によだれと思われる液体が付着しています」
クラス…というよりは講堂に近い部屋の中で爆笑がはじけた。
が、黒板の前の教官は違った。
「んだとぉ!?五十嵐お前終わったらちっとついてこい!」
「なーに———!!?」
この教官に呼ばれるということはすなわち死を意味する。
しかも普通の教科書と違い、何年使っているかわからない支部管理の強者の教科書である。
よだれを垂らすなど天皇陛下に空手チョップを食らわせたような重罪だ。
クソッと舌打ちして告げ口した隣の同期をにらみつけた。
視線に気が付いたのか、同期である川島誠也は机の下でピースサインをした。
うわ、こいつうっざ……!!あとで殴り倒す!!
膝の上で握りしめた拳に静電気がパチッとはじけた。
川島は「こわいこわい」とでもいうかのように俺との距離を少し伸ばした。
やがて長い長い講習が終わり、俺は教官に一発締められた後、多くの部員の溜まり場となっているフリースペースに向かった。
案の定、奴はそこにいた。
俺は早足で川島の座っているテーブルへと向かうとバン、とテーブルをたたいた。
「どうした、そんな殺気飛ばして」
川島は部外者かのような口調で言い放った。川島は結構長身で、座っていてもその頭の位置は高い。
しかもそれがかなりイケメンというのがまたさらに気に食わない。
「お前これで俺階級落ちたらどうするつもりだよっ!」
そう怒鳴って俺は胸につけている「二等防衛士」の階級章である並んでいる二つの十字架を見せつけた。
去年ゼンザス防衛隊ネクラフ支部に入隊し、こないだようやく試験に合格して得た階級である。
川島の胸にも同じ十字架がつけてあったが、あくまで顔は冷静である。
「大丈夫大丈夫、よだれ一滴で階級落ちないって
そんな話聞いたことないし。
それに、荒川教官は結構お前のこと気に入ってるし」
「お前がそうさせたんだろうが…!てか、気に入られてねぇ!」
荒川克之教官は、さっき勇を怒鳴り散らした、部員の間でも「鬼」で有名な御方である。
「おいおい、せっかくの休憩なんだからもう少し休めよ。次からまた射撃訓練だぜ?」
まだ腹の虫はおさまらなかったが、川島の言葉ももっともなのでひとまずそこで区切りをつけた。