複雑・ファジー小説

#00 - 僕は生きていた ( No.1 )
日時: 2011/09/30 21:42
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 「生きてごめんなさい」と思った事はあるけれど「死にたい」と思った事はない。「こんな自分死ねばいいのに」と思ったけれど、その感情はただ客観的に見て抱いただけであって、僕はそんな事思ってなかった。いつも生きたいと思ってた。
 生きたくて逝きたくて。何百年と生きてる、しかし若い彼女の元に行った僕は雑用係を押し付けられた。いやいやそういう事は望んでないですよと僕が愛想笑いで言うと、強気に笑って彼女は言い放った。

「何言ってるの、あなたはここに居ないといけないのよ」
 
……だって。
 魔道士は昔の僕を、今僕が生きているこの場所に惑わせて引き寄せて惹いて連れてきた。哀れな昔の、ただふらふらと歩いていた僕を救う為に。 
 彼女は屋敷の中で生きていた。この世から隠れる様にして。僕はここでひっそりと生きていた。誰にも気付かれない様に。
 ——誰にも、見られない様に。