複雑・ファジー小説
- #01 - 過去の絆 ( No.2 )
- 日時: 2011/09/23 09:40
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
#01 - 過去の絆
僕と彼女は屋敷の中に居た。広くて説明できない位の屋敷の一部分、彼女の寝室に僕と彼女は居た。ちなみにベッドとクローゼットしかないこの至ってシンプル部屋に僕は敷布団、掛け布団、枕、抱き枕の四セットをセットした状態で彼女のベッドに寝転んでいた。
僕は所謂バイト——まあ正しく言うとただの雑用なのだが、彼女はこの屋敷の持ち主だった。
しかし彼女はこの屋敷の持ち主なだけだった。まあ結構広い屋敷なのだが、けれど彼女は世界を持っていなかった。彼女が手にできているのは僕とこの屋敷だけ。それだけ。
ちなみに僕が持っているのはいっぱいあった。あったってだけで、もう既に無くした。あと残っているのは僕と彼女だけ。それだけ。
「いい加減、暇だわ。ちょっと零、買い物行ってきなさい」
「無理だよ流。だってお前も僕も外出れねえじゃねえか。買いたいなら通販で買えよ」
大きい桜色の、可愛らしい天蓋付きのベッドで僕と一緒にだらけているこの僕より年下っぽく見える少女こそが、僕の言う彼女。僕と屋敷しか持っていない彼女。世界を持っていない彼女。名前は、流。美少女な美老女だ。
光る銀の髪は背中まである。冬以外は常に髪をあげていて、今日はポニーテールだった。スタイルは良さげ。と言うか滅茶苦茶良い。モデル並みだ。胸も巨乳でもなく貧乳でもなく、丁度いい位ににあるし、足も長いしくびれも素敵だし。顔は整っていて、ぷっくりと膨らんだ綺麗なピンク色の唇。妖艶な紫の瞳は相変わらずジト目で僕を見ていた。
「何で僕を見てるんだよ流」
「いや、何だか変態的な事を考えていそうな目をしていたから」
「心の中を読まれている!」
二百年も生きていたらそういう事も出来るんだなあ……流石だぜ、人生の先輩だ。先輩と言うにはとても歳が離れている気がするけれど。
僕は零。苗字は別に名乗らなくてもいいと思うし、と言うか忘れたのでスルーしておこう。思い出せる。だが僕は外に出れないのだった。
「じゃあ早く朝ごはん作って来なさいよ」
「お前には手伝うとかいう良心は無いのか?」
「食べて褒めたらそれだけで良いでしょ?」
「ああ十分だ!」
「じゃ、私ゲームしてるわ」
「ハッ、騙された……!」
何て単純で純粋なんだ僕は……。流に褒められるって言うのは中々ないから嬉しいんだけどな。