複雑・ファジー小説

#02 - 結びなおす糸 ( No.22 )
日時: 2011/09/19 15:33
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 舞雪に向かってきた花びらは、舞雪の体に傷を付ける。しかし舞雪は、痛みに顔を歪めるものの、そこから一歩も動かなかった。薄い水色の着物は、花びらが当たった場所が赤く染まっていた。
 
「どうして……どういう事」
「私は、あなたに言われてこの死体を封印しようと思ったわ。アンタの言う通り、これは死体なんかじゃなかった」
 
縁は、その細すぎる足で死体を踏みつけて、見下す。舞雪は、怪訝そうな顔をしたままで、ずっと縁を強く見つめ、話を聞いていた。

「けどね、これは……いや、もう居なくなった魔道士は、と言うべきね。魔道士は、強かったわ。最終的に私は魔道士に負けた。そして魔道士は、根こそぎ私の、全てを呼び寄せる力を奪って行った」
 
舞雪は、縁の話を聞いて静かに驚愕した。
 全てを呼び寄せる力——それは縁のもう一つの能力であり、悪用してしまうと、世界の全てを操れる程の恐ろしい能力だった。
 縁の山姫と呼ばれる、能力の高さと、美貌。それも全てを呼び寄せる力の一部であった。

「それだけなら、私はアンタを許せた。けどね……魔道士は、アンタに案内された、って言ってたのよ」
「違う! 私は……」
「やってないって?」

舞雪の言葉を遮り、また睨む。舞雪は息を詰まらせ、俯く。縁はそんな舞雪を見て、暴れないのを確認してから話し出す。

「アンタは私をここに連れて来たわ。お馴染みの気を読み取る能力で。でも、本当は分かっていたんでしょう? この死体の存在が。これは強いモノだって。だからアンタは、これの中に入っていた魔道士から逃げた。私に任せて、ね」

否定しようと舞雪は口を開けるが、言葉を出すその前に、舞雪は足をふらつかせて、そこに倒れた。縁は舞雪を一瞥して、また死体に目を向けた。

「私の為に、動くだけよ」