複雑・ファジー小説
- #02 - 結びなおす糸 ( No.24 )
- 日時: 2011/09/19 16:49
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「とは言っても、私は食べ物とか作れないから、一応手伝ってもらっている人も居るんだけどね」
と、付け足した。
舞雪さんは顔をあげて、話を聞くが、話の内容がいまいち分からないらしく、口を開けたままの抜けた顔だった。
先程まで、僕に向けていた嫌悪感が、さっぱり無くなり、ほんわかと内面が柔らかくなっていた。多分、マイナス思考になってるから自分を責めてるんだろうな、とか思ってみたり。
それに僕もよく分かってない。とりあえずこの舞雪さんから貰った雪で作ったシャーベットを食べろ、と言っている事は分かる。ただし理由は不明だ。
「これは、あの城の溜め池の水から作ったって言ってたわね」
「はい。ずっと、昔の水ですが……」
「だから必要なのよ」
か弱く話す舞雪さんに対し、強く言い放つ流。僕は何も喋れないままなので、自分なりに状況整理をしてみる。
おそらく、舞雪さんと縁さんが戦った(疑問系)後に、流が城に訪れて、舞雪さんに頼んで雪を貰ったのか。そして貰った雪から作ったシャーベットが、この蓋にマッキーでどでかくメロン味と書かれているこれか。
「記憶が宿っているから、とりあえず、食べなさい」
舞雪さんと、ついでに僕にも催促する流。僕は一応流に渡されたスプーンでシャーベットを掬い、口の中に放り込む。うまいけど、頭が痛い。
キンキンと痛みを訴えてくる頭を無視して、どんどん口に放り込み、僕はシャーベットを食べ終えた。ぐう、やはり頭痛が僕を襲った。舞雪さんはというと、やはり不器用なのか、未だに蓋を開けようと頑張っていた。
僕は何だか見ていられなくなり、「開けますか?」と、良心で聞いたはずなのに、どうしてか舞雪さんは怒りを表し、こちらを横目で睨んできた。僕のメンタルが磨り減っていく。やはり、性格が柔らかくなったというのは撤回だ。
流が再度呆れながら、舞雪のシャーベットを奪い取った。そして、またいとも簡単に蓋を開ける。うーん、物体は違うものの、デジャヴである。
「ありがとうございます……!」
顔を赤面させて感激してた。恋する乙女みたいだな。
そして、スプーンの使い方を流から教えてもらい、結構な時間をかけて舞雪さんはシャーベットを平らげた。
————眠い。強烈な睡魔に襲われ、僕はそこで倒れた。完全に瞼を閉じる前に、舞雪さんも一緒に倒れて、た、はず。