複雑・ファジー小説

#01 - 過去の絆 ( No.3 )
日時: 2011/09/04 16:28
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 この屋敷は店で、まあお悩み相談所っつったら当たっている。だがまあ、そんな簡単なもんじゃない。できる限りのどんな悩みでも解決できる。それも普通のお悩み相談所だって? そんな簡単なものじゃないんだよ、ここは。未来、過去、魔術、妖怪、幽霊。そこに存在している様でしていないものの悩みも受け付ける。ただし、僕の専門じゃない。こういう『お悩み』を解決するのは、十五、六歳に見える老人、流である。僕はあくまで雑用として流の傍に立っていたり、お客様をもてなしたりするだけだ。立っている時間は少ないけど。

 僕は卵を溶いてフライパンに流し込む。卵焼きだ。アレンジでネギもパラパラと入れる。
 
 流は全てを操る。故に、全てを持ってない。横から弄くるだけで何も手にしてはいないのだ。僕と、屋敷以外は。全てを操る代償として、全てから縛られ、動けず。監禁、拘束。世界には、流が自由で居られる場所なんて、どこにもないのだ。

 卵焼きが出来たので、一口サイズにして皿に盛り付ける。電子レンジで既に温めておいた、昨日の残り物の色鮮やかな野菜炒めを取り出したとたん、煙があがる。温めると言う表現を使っているが実際は触れただけでも熱い。布巾なしじゃ触れない。
 卵焼きと野菜炒めをお膳に乗せる。炊飯器が置いてあるカウンターにご飯茶碗を置いて、ご飯茶碗の中に、炊きたての白米を盛る事を二回繰り返し、それもまたお膳に乗せる。
 そして水道水をコップに入れて氷を入れる。氷はパキパキ、と割れ目が入る音を出した。水道水コップもまたお膳に乗せる。ちなみにお膳の大きさはそこまで大きくはないが、まあ詰めれば何とか入る。コップが落ちそうな状態になっているのは無視する。
 
 お膳を持ったまま、畳に向かう。そこにはちゃぶ台が一つ寂しく置いてあるぐらいで特に何にもない。食事スペースである。お膳をちゃぶ台に置いた所で、お膳を下に下げる。そこで僕は箸を忘れていた事に気付いて、箸を取りにキッチンに戻った。
 赤い花柄の可愛い箸と青いシンプルな箸を手にとって、僕はそれをちゃぶ台に置く。そして僕は流が今テレビゲームをしている部屋に向かった。忙しいな、全く。