複雑・ファジー小説
- #01 - 過去の絆 ( No.8 )
- 日時: 2011/09/23 09:40
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
流の部屋に入ると、クーラーがよく効いた寒すぎる部屋でゲーム真っ最中だった。
「おい、ご飯できたぞ」
「後で行くわ」
即答だった。なんか突き放された気分になった。怒ってるのかなアイツ……ご飯遅いから怒ってるのかなアイツ……。僕は少し不安になりながらも、ご飯を食べてこようと思って畳間に向かった。
畳みに正座で座り、「いただきます」と挨拶をして朝食を食べ始める僕。うむ、やっぱり和食は美味い。野菜炒めも卵焼きもご飯にしっかりとマッチしている。白米に合うのはやはり和食しかない。
三十分か四十分ぐらい経ったところで、僕は朝食を全て食べ終え、そして食後の挨拶をした。
——それにしても、遅い。流はご飯の時間には、絶対食べる筈なのに。何よりも食事を優先する筈なのに。ゲームに夢中だなんて事有り得るか? いいや、有り得ない。さっき怒ってたから僕と一緒の時間帯には食べたくないとか? それは流石にショックだぞ。
僕は、頭の中で巡るマイナス思考を無視して、自分が使ったお箸とご飯茶碗を台所に置き、再度流の部屋に向かった。
流の部屋のドアを開ける。何回往復して何回このドア開け閉めしてるんだろ、僕。そんなくだらない事を考えていると。
「アレ……?」
クーラーが付いたままの状態の寒すぎる部屋。そこには、流の姿が無かった。それにしても寒いなここ。風邪ひいたりするんじゃないか。僕はクーラーの電源を消して部屋を出た。
じゃなくて。アレアレアレ。何で流の姿が無いんだ? アイツと僕はどこにも行けない筈だろ。一生外に出られない筈だろ。なのに何故アイツがいない。いや、多分すれ違いで流は畳に行ったに違いない。僕はそう思いながらまた畳に向かう。
「りゅーうー」
「ふぁい?」
僕がちょっと心配して流を呼びながら移動していると、間抜けな返事が聞こえた。僕は食事スペースの畳間を見ると、卵焼きを食べている流の姿。
やっぱりただのすれ違いだったのか。と、僕は安堵の溜息を吐く。むしろ心配損だったが。
「なあ、流」
「……何よ」
朝食を食べる流の姿を見ながら、僕が話しかけると、流は口に入っている物を飲み込んでそう言った。
「お前、部屋クーラー付けたままだったろ」
「そうだけど」
「何、お前わざとそうしたの」
「そうよ。別に無駄でも無いでしょ。どうせ私が居るんだから」
「その通りです」
そう、流が居るから僕たちはここで暮らせている様なもんだ。お悩み相談所なんて言う店で、儲けがある訳もなく、その金でこんな大きな屋敷に住んでいるとなれば、電気代が凄い。半端じゃない。しかし、何故僕らが暮らせているのかと言うと、節電してるから——でもなく、実はお金持ちでした、てへぺろ! なんて事もなく、単に流の魔術を使っているからである。
それならご飯だって服だって何だってお金はかからない、と思う人も少なくないと思う。
そういう非現実すぎる事はない。まあ魔術と言う言葉も非現実だが、魔術で操れる事は生きない物のみだ。例えば雷だったり水だったり、風だったり炎だったり。常に流の魔術が働いて、この屋敷は何とか保っている。ガス代電気代その他諸々。植物などは生物で、食べ物とか衣服なんかは植物とか動物とか、とにかく何らかの生物でできている。その為、金がかかるのである。