複雑・ファジー小説

#01 - 過去の絆 ( No.9 )
日時: 2011/09/23 09:42
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「アンタ消したの?」
「ああ、消した」
 
僕が流の質問に答えると、流は食べ物が喉に詰まってむせたみたいで、咳き込む。苦しんでいる姿の流。数秒して咳が落ち着いてきた流は水を飲んでから一息吐き、僕を鋭い目で見つめる。
 
「な、何だよ。そんな目で見て」
「いや、今は夏よね」
「ああ、そうだけど……何か問題でもあるのか?」

何か怖いぞ。やっぱりコイツ怒ってるんじゃないか? 無表情って言うのがまた僕の恐怖をかきたてる。僕がそんな事を思っていると、流が口を開いた。

「零」
「はい、何でしょうっ」
 
表情を込めずに、それはもう無機質な機械の様に、僕の名前を呼ぶ流。もうやだ。敬語使う程怖い。恐ろしい流。

「……何敬語使ってんのよ」
「いや、それは——まあ何でもない」

僕の敬語が相当嫌だったのか気色悪かったのか何なのか知らないが、流は、僕の事を引いている様なしかめっ面で、見つめた。僕と流の距離も実際に離れている気がする。敬語を使ったのは、流が怖いからなんて事を言ってしまったら、戦争時に時間を戻されるか、あるいは魔術を使われて殺される危険性があるのでやめておいた。今の姿の様に大人気なかったりするのだ、流は。

「まあいいわ。私の部屋に行ってクーラー付けてきなさい」
「んな、面倒な事……」
「そんな事言わずに。このまま放っておいたら、アナタ、誰か殺すわよ? 雑用」 
「お前、僕を殺人犯にしようとしてるのか!?」
「いいえ、強姦魔で殺人犯よ」
「恐ろしい奴だ!」

いくら僕がナイスバディとか素敵な女の人が好きだからって強姦魔は酷い。僕はもっとレディに優しい筈だ。
 僕は強姦魔にも殺人犯にもなりたくなかったので渋々あのシンプルイズベストを押し出している流の部屋に向かうため立ちあがると、流が笑って言う。

「可愛い女の子が居たからって、手を出しちゃ駄目よ?」
「僕はそんなセクハラ行為をしない!」

僕の言葉の後に、クスクスと笑ってご飯を食べる流。全く、強姦魔ではないと何度も何度も……言ったっけ。とにかく、僕の事を疑い過ぎだ。失礼過ぎる。
 と、僕はそう思いながら流の部屋に向かうのだった。