複雑・ファジー小説
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 鬼ごっこ編第十話更新 ( No.11 )
- 日時: 2011/08/21 17:01
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: kji2ZSe9)
第十一話 コイントス
「なんで・・・俺が?」
「いやなんでってランダムだからに決まってんじゃん。要するに適当なんだよね。別に選びたくて選んだ訳じゃなし。ところで、今光で射された順番分かってる?その順番通りにげえむの順番回すから。じゃ、ワープ行くよ」
足元に、闇が現れる。これは一度見たことがある。感じたことがある。これは自分たちをここに誘ったあの闇だ。あの時みたいに抵抗する暇なく迅速に包み込むのではなく、伝言を置いて行けるようにゆっくりと包み込んでいく。これは、今目の前にいる人達に何か言いたいことは言って行けよ、ということなのだろうか?ならば調度いい。一つだけ、助かる道を伝えておこう。緊急の時はどこに逃げ込むべきか。
「先輩、何かあったら警察署まで誘導お願いします。あそこなら・・」
「分かってるって!そんなことよりみにげえむの方をしっかり頑張ってちょうだい。これから先の難易度がかかってるんだから」
先輩からの励ましを受ける。どうやらこの調子なら大丈夫そうだ。三人を信頼したその瞬間、闇の浸食のスピードが増す。一つだけ、嫌な予想がある。もし仮にコイントスにクリアしたとして、自分たちの戻ってくるタイミング、そして場所などが一切分からない。でも、げえむに失敗したら十二時にはその鬼が解放されるというのだからそれまでには終わるだろう。だが、もしも十二時ギリギリに終わったのだとしたら、そして今この場所に戻ってきたとしたらおそらく先輩たちとバラバラになって孤立するだろう。そうなった時に、逃げ切れるかは分からない。
「楓、六時よ」
「はい?」
「午前六時に学校集合。いいわね?」
「了解」
力強い顔で楓は頷く。その瞬間に完全に闇は秀也を埋め尽くした。ぐちゅぐちゅと気味の悪い音を立てて地面に吸い込まれていく。ちょっとずつ、ちょっとずつ地面へと入りこみ、遂には瞬間移動するかのように消えてしまった。
気付いた時には、ガラス張りの部屋にいた。部屋と言うより、檻といった方が正しいかもしれない。透明な壁に囲われた空間に自分を含めて四人の人間がいた。五人選ばれたはずなのに、最後の一人はどこにいるんだろうと辺りを見回す。結局見当たらなくて肩を落とし、地面を見る。すると、そこにいたのだ。五人目の人間が。そこに立っていたのは黒人系の男性だった。少し歳はいっているが人種ならではの体力を活かしてここまで逃げ抜いてきたのだろう。汗で、着ている服の色が変わっているほどだ。どうやら、この今立っている空間は信じられないが宙に浮いているらしい。そんなことに感心しつつも意識は、コイントスのルールがどのようなものになるのかということに向いていた。そこに、あの素性の知れぬ奴の声が響いた。
「やあ、選抜者五人組。今からルールの説明をするよ。ルールは簡単!コインが裏か表か五回連続で正解したらOK。一人何回でも挑戦できるよ」
要するに、時間をかけたらクリアできる可能性があるということだ。思った以上にシンプルで簡単なげえむに心底ほっとする。競技開始のチャイムの音と共にその黒人のおじさんは『表』と言った。肝心のコインが無いではないか、そう言いそうになった瞬間に上からコインが落ちてきた。ゆっくりと、床に向かって落下していく。カーンと軽い金属音を立てて床に当たったコインが跳ね上がる。何回かバウンドした後にカタカタと動きをゆっくりと細かくしていく。止まるのはもうすぐだ。おそらく、絵柄を見る限り今回は裏だろう。残念ながらはずれだが、次が当たれば良い・・・・・
—————ちょっと待てよ
おかしい、不自然だ。あんなに鬼ごっこが理不尽なルールで残酷なものだったのに対しこの簡単さは逆におかしい。あいつは確かに何度でも挑戦していいと言った。しかし・・・罰が無いとは一言も言っていないんじゃないか?頭の中に罰ゲームの単語が反芻される。まさか・・・
「おい!そこの人!何にかはまだ分からない!けど、気を付けろ!」
地面に向かっておもいっきり叫ぶ。しかし、下の奴に聞こえている気配は無い。どうやら、こっちの声は聞こえていないようだ。周りにいる三人が突然の叫び声に目を丸くする。こいつは何を言っているんだとでも、言いたげな。
そして、コインは裏の目を出した。彼の、短絡的な判断が裏目に出て、そこから地獄絵図は始まったんだ。
「うああああっ!!」
突然、外れの目を出したあの人が叫び声を上げる。腹の奥を抑えつけていかにも痛そうにしている。一体、何が起こったのだというのだろうか?
「そこの楓くんの言うとおりだよ。言動には気を付けた方がいい。単純に決めて、外れたら罰が下るんだ。その罰って言うのはね・・・」
いつものふざけた口調とは違う、真剣で、冷酷な声で彼はそのルールを告げた。
「外れるたびに一つ、ランダムで身体のどこかの骨が砕け散るんだ」
続きます