複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  鬼ごっこ編第十二話更新 ( No.14 )
日時: 2011/08/31 20:42
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: lxH2OECm)

第十三話








「今からそこに俺を行かせろ?」
「えっ?なんで?どうしてかな?」

どこまでもふざけやがって・・・目を細く鋭くし、歯ぎしりをする。こっちの苛立ちに気付いたのか、少々バツを悪くしたのか普通に話しかけてきた。

「で、どういう理由があんの?」

ここで一つ気になることがある。ルールが分かった、だから変えろ。そして「はいそーですか」と返すほどこいつは出来た性格なのだろうか?正直な感想を述べるとそんな訳が無いと思う。でも、上手い言い訳が見当たらない。ダメ元で言ってみるしか無いようだが・・・

「ま、別にいいんだけどね。でも条件がある」

葛藤の中、以外にも了解の回答がくる。威嚇するように細めていた目は驚きで一気に見開いた。

「君の順番は本来最後なんだから、あとの二人にはもうコイントスに参加する権利がなくなるけどそれでもいいかい?」

小さく楓は舌打ちを鳴らした。その場合、俺一人がいいと答える訳にはいかなくなる。そもそも、このみにげえむは本来のげえむである鬼ごっこのクリアに近付くために必要不可欠と言ってもいいかもしれない。隣にいるこの女性がどういう反応を取るか・・・

「・・・生きて帰ってくる自信はある?」

唐突に、横の人はそう訊いてきた。あまりに予想外の、質問という返答だったので何と返していいか分からず、硬直してしまった。それを見て心配になったのか、かぁの序はもう一度訊いてきた。

「死なない自信はあるの?」

不安そうではなく、念を押すように強い口調でそう言ってきた。すぐに分かった。この人は人が目の前で苦しんでいる姿なんて見たくないのだと。

「ええ、あります」

力強く秀也はそう答え、頷く。瞳には決意が満ちている。それをしっかりと確認したその人はにっこりと笑って優しくこう答えた。

「じゃあ、よろしくお願いしますね」

下の人の返答は、聞くまでもなく明らかだった。へたれなのか知らないがもうすでに骨を一つ粉砕されて死にそうな顔をしている。全く、格闘選手を見習ってほしい。あの人たちはもっと凄い怪我でも闘い続けるというのに。すうっと、闇に包まれてないのに浮遊感が身体を取り巻く。いつものような気味の悪さは一切無く、いつの間にか下に降り立っていた。

「じゃあ、楓君はルールが分かったと言ったぐらいだから全部紅コインでいいかな?」
「いいぜ、一つたりとも外す気は無い」

そうして、一番最初の表か裏かの選択が迫ってくる。どちらを選ぶかと言われたら、五回連続で表を選ぶ。それがさっきの結果と合わせると、最良の答えだと秀也は思っている。

「じゃあ・・・・・・」

この後の楓の言うことを聞いてこの先の安否を問いただした彼女は、開いた口が塞がらなくなる。

「裏の裏の裏をかいて表だ」

これは先ほど、秀也が思いっきりバカにしていたことである。おそらく、声にも出ていたであろう。それを聞いていたせいでますます彼女は不信に思っていた。なぜ今さらそんな物を持ち出すのか・・・と。上空から真紅のコインが落ちてくる。くるくると回転して、地面へと向かい真っ直ぐに、落下してくる。地面にたどり着いた硬貨は、高らかに音を立てて跳ね上がった。秀也にはその音は勝利の福音のように聞こえた。

「やっぱりそうだ」

出た目は表。秀也の予想通りだ。どうなっているか分かっていない上の二人に説明を入れる。

「このコイントスで出る目は、挑戦者がどちらかを指定した瞬間にもう決まります。全くの運任せなんて不可能です。そして、大勢の方々は表か裏か、それだけしか言いません。そして、さっきの裏の裏の・・・という言葉を使った時、たった一回だけ当たりが出ました。その理由がルールと繋がっているんです。コイントスで出る目は・・・」



—————その人が選択の際に最も多く口ずさんだ選択肢の反対側



口笛と、拍手をする音が聞こえてくる。きっとあいつの仕業だろう。と、いうことはこれは正解のようだ。

「普通の人は表か裏か、そのたった一回しか口にしません。たとえば、表と言えば、表は一回言ってしまったのに対し、裏は一回も言っていない。つまり、一番多く言っているのは表ということになり、その反対の裏が出てしまうということです」

ここで楓は説明を一旦切った。小さく、フフッとあの天の声が笑ったからだ。どういうことかと耳を傾ける。

「もう二回目の選択は始まっている。今、君は表と裏、どっちを多く言ったか覚えているかい?」
「関係無いし、聞いとけよ」

軽く息を吐き出し、一気に深呼吸で空気を肺に充足させる。そして・・・

「裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の・・・」

まだまだ、息の続く限り続けていく。そうして、限界に達したその瞬間、

「・・・裏をかいて表だ!」

そう、数え切れぬほど裏と繰り返したら裏の方が多くなるに決まっている。あちゃ〜と、残念そうな声が聞こえる。頭を抱えているのが想像できる。





みにげえむ:コイントス、CLEAR





                                 続きます




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さあ、次回から鬼ごっこ復帰だ!