複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  鬼ごっこ編第十四話更新 ( No.18 )
日時: 2011/09/06 20:57
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: GsncfwNf)

第十五話 問題発生





流れるように景色が動いている。口から洩れでる吐息は、不規則に時間を刻んでいる。額に、背中に、全身に汗が浮かび、べっとりと制服が貼りついていた。こっちに戻って来てからのことを思い返す。それからの数時間、鬼が嘘のように見つからなかった。見つけられることが無かった、と言った方が正しいかもしれないが、こっちの場合鬼を見つけたい訳ではない。できるだけ見つからずに、視界に入らずに視界に入れずに進めば進むほど、情勢はこちらに傾くのだが何だか流石に怪しく感じられる。嵐の前の静けさと表現してもいいかもしれないが、静かではなく、無音のようだ。動乱の類のものは一切起きず、爆発音や発砲音が聞こえない。もうすぐ、後十分程度で六時になろうとしていた。ようやく、学校のすぐ近くまで来ることができた。電車が動いていない以上、徒歩しか無い。まあ、はっきり言ってみると・・・

「大丈夫?後少しだったよね?」

凄く足の速い人に前で引っ張ってもらっているのだが。引っ張ってもらうと今言ったが、紐か何かでくくりつけて物理的に引っ張る訳ではなくあくまでも比喩だ。先頭に立ってもらって、ペースメーカーや風避けの役目を果たすことを引っ張るとかいう風に表現したりする、という訳だ。陸上、競輪、などをやっている人ならそんなこと言われなくても分かるだろうが。

「はい、このペースなら、後五分ぐらいです」

数時間の間、三十分走って一時間歩くぐらいのペースで来ている。鬼がいきなり出てきてもすぐに逃げられるように、体力を温存している。幸い、履いていた靴がランニングシューズだったから走れているが、マラシューだったらこれは辛い。マラシューというのは、マラソンシューズか何かの略で、靴底が驚くほど薄く、驚くほどに軽い。だが、その反面衝撃をもろに足に伝えてしまうので、すぐに筋肉痛になったりしてしまう。ペースを伝えておくなら、やはり体力を残しておくために一キロ当たり五分ぐらいのペースだ。

「じゃあ、このままのペースで行くよ」

もうすでにかなり消耗していたのだが、面目が立たないので、分かりましたと答える他無かった。


                        ▲




「さて、もうちょっとで六時ね・・・」

そう、氷室は呟いた。聞き耳を立てていた伊達もすぐに反応する。

「そうね。楓がどこに戻ってきたかにもよるけど、そろそろ来るんじゃない?」

時計は今、六時ちょっと前だ。そして竹永と氷室と楠城の三人は校庭に立っている。さっき看板があったのだが、学校という空間はかなり特殊で校庭は建物にみなされず、廊下は一つの建物として扱う。ルールはおそらく「走るな」だろう。そして、ホームルーム教室は、全てを一緒くたにして一種類の建物とカウントする。三年五組に三十分滞在すると一年四組にももう入れないということだ。そして、理科室や家庭科室などは、それぞれ一つ一つのルールがある。

「二人とも、校門が開いたぞ」

楠城が話している二人に声をかける。咄嗟に彼女らは校門側を見た。楓だったらいいのだが、鬼だったら・・・という訳だ。しかし、そこにいたのは一人見知らぬ女の人が共にいたが、楓だった。

「ちゃんと帰ってきましたよ、せんぱ・・」
「良くやった!」

近寄るや否やいきなり、竹永は秀也の後ろ側に回り込み、おもいっきり背中を叩いた。当たり所が良かったのか、大きな音が鳴り、秀也は一瞬息を詰まらせた。若干涙目になりながら、その痛みを訴えている。

「あんたにしては頑張ったんじゃない?」

語尾が疑問形なのは挑発なのだろうか、そもそもそのセリフ自体が憎まれ口なのだが、冷河も賞賛の言葉を口にする。そう判断した理由はちょっとしたものだが、楠城や竹永が自分に向けるような暖かみが、こもっていたからだ。

「まあ、あれでクリアできなかったら、あなたと私を比べることができないからね。帰って来てくれて嬉しいとは思ってるわよ。これからが勝負よ」

何の勝負だよ、思わずそう言いたくなった楓だったが、そんな勝負をするおかげで生き残れるなら良しと判断した。そのまま黙り続ける。

「で、結局そこの人は誰だ?」

当然の質問を、ようやく楠城が口にした。そのために、みにげえむのコイントスのルール説明から全てが始まった。




〜説明中〜




「何で説明に三十分もかかったんだか・・・」

楓がしきりに頭を押さえている。一分に一回のペースで話が脱線したせいでおもいっきり時間がかかった。陸上関連の人という訳で竹永と斎藤はもうかなり仲良くなっていた。そんな折だ・・・



———あいつの声が聞こえてきたのは



「やあ、おおよそ七時間ぶり?司会進行は未だ健在だよ。さて、新ルール追加〜」

新ルール?ここに来てまたそんな物出しやがって。今度は一体何だというんだ。もう後三十分したら七時になって首領格の鬼が来るはずだろ。

「さあ、これからみんなに本来みんなが持っていない才能をランダムで配って行くよ。活躍している人ほどショボイ才能が来るけど、気にしない気にしない」

才能を・・・配る?意味の分からぬ言葉に目を丸くする。

「今から、一人一人、活躍した回数が少ない人から才能を配って行くよ」

まず、楠城に光が当てられる。

「君には、アクロバットの才能を授ける」

その次に、光が当てられたのは氷室。

「君には、銃を撃つ才能を与える」

さらにその次、斎藤より先に、先輩が射された。

「君は、物を投げる時のコントロールを上げる」

今度射されたのは、斎藤だった。

「君は、気配を消す才能だ」

そして、予想通り最後に秀也が射された。まあ当然だ。こっちでも色々活躍して、みにげえむも易々とクリアしたのだから。

「最後に楓君は、手品の才能だよ」

て・・じな?最早目が点になる。他の人は逃げたり多少抵抗できる。何だよ!手品って!だが、そんな批判の念は次の瞬間にすぐに消えた。

「以上五名に、才能を与える」

何かが、身体の内で、心の底から湧きあがってきた。





                                 続きます


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今回は、ちょっと長かったんでここには特に書きません。
では、次回に続く。