複雑・ファジー小説
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第一げえむは鬼ごっこ ( No.2 )
- 日時: 2011/09/21 18:15
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Jagfnb7H)
第三話 ルール
金属が擦れ合うガシャガシャと耳障りな音がそこいらの建物で反響している。その音は一応遥か彼方から聞こえているが、絶対に油断はできない。
向こうには銃がある。リーチなどほとんど関係なく、視界に入ったらほぼ確実に敗北・・・死が確定すると言っても良い。
骸骨の兵団が刻一刻と迫ってくる中、不意に恐れを感じた大勢の人間は弾けるように駆けだした。
さっきまで冗談だと思っていたこの状況が現実味を帯びてくるに連れて焦りは膨れ上がり、理性も失いかけてきている。
命の危機に遭遇している、そんな状況で思いつきで行動するのがどれほど危険かはまだ俺には分からない。しかし、落ち着いているよりも遥かに死に近い位置を陣取ることになることだけは明白だ。
「楓くん、どうする?どっちに逃げる?」
「やっぱり音の反対側じゃないですか?自分から突っ込むなんて馬鹿げてますし」
了解の意味を込めて先輩が縦に大きく首を振る。目には納得していることから生まれた真っ直ぐな光が発されている。
そうして、多少散り散りになっているとはいえ、たくさんの人の流れと同じ方向に走り出した。
やはり普段から走り慣れているせいか自分も先輩も周りほど疲れていない。焦りのせいか普通にフォームが汚いのかは分からないがみんな動きに無駄が多い。女走りなんて論外中の論外だ。
逃げ切りたかったら走るか、隠れるかぐらいしか無い。あえて言っておくとするならばルールを活用して建物の中に立てこもることだ。それなら場所によってはタイムオーバーまでの三十分は安全に過ごすことが出来る。
ただ問題はどこが安全かということだ。建物によって一つ一つルールが違う。ということはだ、無数にある建物からルールを想像し、なおかつそこから適したものを選択してからその建物を探さないといけない。もし間違えてスポーツジムのようなところに迷い込んだらとんでもないことになる。無数の鬼たちと永遠に殴り合いを続けないといけないことになる。まあおそらく十分たつころには殴り殺されてしまうだろう。
「で、どっか建物行ってみます?道路ばっかり走ってたら撃たれますよ」
「そうねえ、役に立つところは後に置いておきたいから・・・まずどういう風になっているのか理解するために学校に行ってみましょう。学校では廊下で走らなかったり適当に教室で勉強したらOKでしょ?」
「いや、廊下で走れないは致命的なので止めた方がいいと思います。それに、ルールを理解するならやはり一番最初はそれなりに逃げやすかったりするところを取りたいですね。逃げる方法が思いつかず、人生ジ・エンドは嫌でしょ?」
「じゃあ、どこにするって言うの?」
「そうですね、絶対に残しておきたいのは病院と図書館と警察署だから・・・そうだ!このすぐ近くに普段は多大な迷惑をかけるあの建物があるじゃないですか!そこ行きましょう。銃とかは絶対使えません」
「この辺って言うと・・・ああ!あそこは良いわね」
良いわね、先輩がそう言った瞬間に後ろからパンっと乾いた音が聞こえてきた。低く小さい聞きとれるか聞きとれないかぐらいのうめき声が聞こえる。
ふと横を振り向くとさっき空に向かって叫んだ男の人が血がじわじわと滲み出る腕を押さえて走っていた。
「大丈夫ですか!?」
「・・・まあな。弾はかすっただけみたいだ。にしてもお前余裕があるな」
「はい!走るのは慣れてます」
「そうか、絶対に気は抜くなよ。死ぬぞ」
「分かってます・・・ところで、手当をするから付いて来てください。安全地点を思いつきましたんで!」
「他人にかまってる場合か?」
「別に、元々行く予定でしたし。それに高校生には死体はショッキングすぎます。正直グロイ死体見るぐらいなら助けます」
「そうか、ありがとうよ」
「それより、撃たれたってことは分かってますよね?鬼はこの直線状にいます。だからとっとと曲がらないとまた狙撃されますよ」
「頭のいい奴だな」
ようやくこっちに気を緩したのか少しだけ顔も緩んだ。だが、血の出るペースは全く緩まない。早く手当てした方が・・・
「で、一体どこに向かっているんだ?」
男の人はまた別のことを訊いてきた。ここいらに住んでいる人間ならこの先にある建物は一つしかないから分かるだろう。
でも、おそらくこの人はもはや都道府県が違うと思う。そう判断した俺は、行き先を伝えた。
「行き先はというとですね・・・」
続きます