複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  鬼ごっこ編第十六話更新 ( No.20 )
日時: 2011/09/14 21:26
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: lm8tIa56)

第十七話 違和感





ぷっつりと、いきなり天の声とのコンタクトが切れた。ここで、楓は違和感に気付いた。今の話し方は何だか変な感覚がした。まずそもそも、原因と結果の関係の辺りの話が今までと比べて尋常ではないほどに長い。今まではどこかしらふざけたような口調で、中身はともかくとして、その伝え方もふざけているような言い草だったのに、今度のあの堅苦しい説明。加えて、いつもこっちと鬼側に不平等が起こらないためか性格からか、あるいはもっと違う理由があるのかは分からないが、アドバイスをするような奴だったのか、あいつは。こっちに鬼が迫っていると一々伝えるなんて・・・

「どうした楓?考え事か」

より逃げづらくなった鬼に対抗して、髪が邪魔にならないようにたまたまポケットに入っていた紅いリボンで髪の毛をまとめてながら、竹永はそう楓に問いかけた。

「いえ、ちょっとぼうっとしていただけで・・・」

この違和感を一々説明したとしても混乱を呼ぶだけだ。できるだけ動揺を見せないようにして必死で楓はそれを隠そうと務める。実際、彼はほとんどその身の中に感じている動揺を見せずにそう答えた。

「そう、ならいいけど」

そう言い残すと、一旦背を向けて氷室たちの方に向かって行った。ここで、一時中断した思考を楓はもう一度考え直す。そう、一番気がかりな点、納得できない点は、一番活躍していないものから有能な才能を分け与え、一番最後に配給した人間の才能は一番使えないという仕組みにしていると言ったはずだ。それなのに、次に言った言葉はそこからかけ離れていた。自分にあるらしい知力、そしてこの才能を組み合わせればかなり有能な力になるとも聴きとれる類のセリフ。まるで、一番の目的は自分に手品の才能を渡すことで、その他の才能がカモフラージュだとしたらどうだろうか。それなら意味が変わってくる。今接触してきた人物はこのげえむの開催者は、自分たちに有利に、と言うよりも生かすためにそれを譲渡したことになる。じゃあ、何のためにそれをしたかという疑問が沸々と沸き起こってくる。自分たちに死んでほしくないならそもそもこのげえむ自体に招待しなかったら良いはずだ。可能性があるとすれば・・・




「やっぱり、何か考えているわね」

楓を見ながら氷室と楠城に、そう話しかけた。二人ともそうだな、と頷いている。さっき何か考えているか訊いた時にほんの一瞬、少しだけ眉が持ち上がった。何か隠そうとしているに違いない。

「今話しても無意味な中身かもしれない。ただ、俺たちを混乱させるような予測が立っているのかもしれないからな」

楠城の意見に、隣にいる冷河が賛同する。今までの彼は何かしら有益なことや本当に危ないことは全てちゃんと話してきているなずだ。だから彼が自分から話そうとしないということならば、今はまだ訊く時ではないということでもある。

「ていうかあいつ気付いているのかしら?考え事する時に寡黙になり、空中のどことも知れぬ一点だけに集中する癖」

じっと睨みつけながら氷室はその癖を指摘した。出来る限りの眼力で睨みつけているのだが気付くそぶりすら見せない。しかしそれは、竹永は気付いていないものであった。

「よっく見てんのねーあんた。嫌いじゃなかったの?」

これに対し、冷河はひどく動揺する。が、内面でのその闘争はそれに対する反論が圧倒的に勝利した。

「大っ嫌いよ。嫌いな奴を倒す・・・っていうか相手に勝つためにはよく観察することから始めるものでしょう?」

ハァっとため息を吐いて竹永は斎藤と楓に集合を呼び掛けた。その間に、叶は氷室にこう言葉を発した。

「あたしだったら、本当に嫌いな奴とは口をきかない。まるで、今のあなたは楓があなたに告ったことを正当化させたいように見えるけど?」

これにも咄嗟に反論しようとしたが、できなくなった。当の本人が来てしまったのだから。ここで、論争は終わったのだが、今にも言葉は口から出そうだった。



—————嫌いな奴にこそやり返してやりたいのだ、と



今の時刻は七時、今からげえむはさらに過酷になっていく。




                                 続きます



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さあ、そろそろ第二戦開始です。
次回からまた逃げまくりに戻ります。