複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  鬼ごっこ編第十七話更新 ( No.21 )
日時: 2011/09/18 10:36
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: PJWa8O3u)

第十八話 才能






「さて、こんな袋小路で時間潰す訳にはいかないわね」

建物を指差して、竹永はそう端的に意見を述べた。言いたいことは大体理解できる。今までの鬼なら袋小路でも、この学校という場所なら適当にルールを組み合わせて対処できただろうが、知力のある首領はそうはいかない。巧みにルールを回避してくるなら、学校だけではなくあらゆる建物からは逃げ出せなくなり、最終的に殺される。相手が今まで放棄していた考えることを取り戻したとなると、今度はいかに相手を消すかではなく、相手から隠れるか、もしくは逃げるかに重きを置いた方が良いはずだ。人によっては闘うといった選択肢でも正解かもしれないが、おおよそ戦闘用ではなく、騙すような才能を授かった楓としては逃げる以外に選択肢が無かった。

「そうだな、鬼が来る前に」

まだ辺りには武装したものが奏でる重苦しい金属音は聞こえてこない。それほど近くにはいないはずだ。小走りで校門に近付いていく。念には念を入れて隠すようにして門の影から顔をすっと出し、目線を辺りにやった。しかし、動くものは一切見当たらず視界に入るのは見慣れた街並みとこんな世界であっても上空遥か彼方に浮かんでいる、煌めきを上げている太陽だった。黒く淀み、死に満ちたこの裏の世界でも日常と変わることなく太陽は昇っている。

「・・・裏の世界?」

ふと、一瞬ここの言葉に何かしらの疑問を感じる。なぜ自分はこの世界が裏の世界だと知っているのか、いきなり不安になったのだ。確かにここに来る前から知っていたはずだ、都市伝説の知識として。だから知っていても何の問題も無いように、楓以外の者には感じられるだろう。実際に、竹永や氷室、楠城は気にしていない。じゃあこの都市伝説を広めたのは一体誰かと訊かれたら、多分大勢の人間は血相を変えて考えると思う。都市伝説は一種の作り話のはず、なのにそれがここまで正確に現実で起きているということはただの偶然で済む訳が無い。彼だって言っていたじゃないか、『原因の無い結果は存在しない』と。だとしたらだ、この噂を流した張本人は、ここに来たことがあるんじゃないのか?そしてなおかつ、げえむにクリアして生き延びた。もしくはこのげえむを開催している張本人、この裏側の世界の主は現実世界に干渉できる・・・もしくは現実世界の住民ではないのか?考えていけばいくほど、楓の中でのその疑いは強くなっていく。

「楓、聞いてるか?」

突然に楠城の声が聞こえる。言葉が耳に入るより先に方を叩かれていたような気もするがよく分からない。何の話をしていたのかもう一度言ってもらおうとしたが、その必要は無かった。金属がこすれることで奏でる不快音、自分以外の四人が今にも逃げださんとする構えを取っている。鬼が来ている以外に、このような状況になる訳が無い。緊張や焦りのような雰囲気も漂っている。思考を一時中断する。逃げることに専念しようと。内向的な気分から、外に対して能動的な気分にギアを入れ替える。力強い光を返し、駆け出す。音が聞こえてくる方向は東側、とすると一番定石として思いたつ逃げ道は西側。一番体力の無さそうな楠城、氷室の二人を先に立たせる。その後を追うようにして竹永も走り出す。最後に、殿(しんがり)として長距離組二人が駆け出した。その大通りを、かなりの速さで駆け抜けている。ただし問題として、大通りな上に曲がり角がほとんど無い。後もう少しで曲がり角までたどり着くといったところで、遥か後ろに角から、兵団がやってくる。それを視界に収めた斎藤と秀也は冷や汗を流した。湧き上がる恐怖を無理やりにでも押し込めて鎮静化させて一気に駆け込む。もうすでに、氷室と竹永は曲がりこんでいる。真っ直ぐ前だけを見て走る斎藤と楓の代わりに、少しだけ顔を覗かせている楠城が後ろの見れない二人の目となる。骸骨の先頭集団のうちの十名ほどが銃のようなものを持っている。

「二人とも、早くしろ!撃ってくるぞ!!」

血相を変えた楠城のその一言で楓はスピードを上げる。全くの同タイミングで曲がろうとすると、衝突する危険性があるからだ。勢いを落とさずに、しかも転ぶことも無くそのコーナーを曲がり切る。楠城もそこから入る。最後に、斎藤が残ったが、鬼達は撃つことができなかった。斎藤の姿が消えたように感じたからだ。このことからうかがえることは、授けられた才能が本物であること。天の声が言っていたことが本当かどうか斎藤は試してみた。するとそれは本当に役に立った。自分が相手の意識から外れたいと思い、息を殺すようにしていると、鬼達は自分に反応しなくなったのだ。これなら何もしなくても逃げ切れるのではないかとも思うが、実はそうではない。適当な場所に爆弾をばら撒かれたら終わりだからだ。

「結構近くまで来てるな・・・」

辺りに目を配りながら楓は走り続けている。手品なんてものが無いと使えないから辺りに使えそうなものが落ちていないか探しながら進みたいのに、こうも近いと探せる訳が無い。そのことに対して不平を漏らすような感じでそのように呟いた。最後尾はさっきのあれで楠城に交代していた。そんなことを気にせずに曲がり角に当たる度に道を変えて鬼とは一直線上に存在しないようになるようにと努める。

「まだ後半日以上あるのかよ・・・」

先は遠い、気が遠くなるほどに。この後自分たちは誰一人の犠牲者もなく逃げのびることができるのか。それが分かることなら誰かに訊いてみたいぐらいだと、漏らしたくなった。




                                 続きます


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後十二時間・・・長い、無駄に長すぎる。
第二げえむや第三、第四まで思いついてるのに状態。
きっと鬼ごっこが終わるまでにさらに四時間ぐらいは普通に
はしょっちゃうと思います。
ていうか第一げえむだけで二十話越えそうってどんだけだよ・・・
愚痴はさておき、次回に続きます