複雑・ファジー小説
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第三話です ( No.3 )
- 日時: 2011/09/21 18:20
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Jagfnb7H)
第四話 鬼の脅威
「行き先はと言うとですね・・」
そこまで言ったところで、楓の声はかき消された。後ろから、凄まじい爆発音が聞こえてきたのだ。何事かと思って急いで振り返る。
そこには、闇のようにどす黒い、爆炎が上がっていた。女の人の高い、天をつんざくような金切り声が聞こえる。顔からは血の気が引いて、もう走ることしか考えていないようだ。
おそらく、目の前で爆弾が爆発して人が巻き込まれ、二度とその姿が現れないという光景を見てしまったんだろう。正直自分だってそんなものは見たくない。
後ろの方にいる人が、叫び声を上げるのももっともだと思う。おおよそ声とは言い難い悲鳴を上げながら、後先考えず全力で走っているのだろう。持久走を走るように、まあまあのペースで走り続ける自分たちに少しずつ聞きとれるその悲鳴は大きくなってきている。
だが、それも途中で消えた。ズンッという、腹の奥底深くに強い振動を与える巨大な音と共に。一旦爆発がおさまった後も、もうその声は聞こえてこなかった。
「もう結構犠牲者出てるのか・・・ところで!結局俺らはどこに向かっているんだ!?」
「今はそんなこと言ってられません!黙って走ってください、ペース上げますから。ついて来てくれたらすぐに分かります。何、特に疲れることはありません。後たったの二キロ程度ですから!」
それって少ないのかなぁ?若干冷や汗を流しながら叶はそう考えた。確かに中長距離の人間からしたら二キロはそんなに言うほど長くないのかもしれない。短距離の叶は二キロが途方もないような距離に思えてならない。二十数秒かけてようやく走り切れる200メートルがさらに延々と十本分続くのだ。おそらく普通なら発狂するだろう。
しかし、体育科に通っている叶としては、まあ二キロを持久走として走ると言うなら、そこいらにいる普通の高校生よりかは速い自信があった。
チラッと横にいるやや年配の人をもう一度、今度は詳しく観察する。まず引っかかったのは驚嘆に値する体力だ。とはいえ、年齢の割にはという意味合いだが。どう若く見積もっても確実に40代には踏み込んでいそうなのに、自分たちと一緒に走っていて、汗こそ浮かんでいるが息はほとんど切れていない。それどころか、その原因もおそらく走っているからではなく腕の怪我のせいだろう。実際、時折腕を押さえながらその顔をしかめている。
次に目に入ったのは腕時計。あまりブランド物に興味の無い叶だが、それでも一度くらい聴いたことのあるぐらい有名なメーカーのものだった。おそらくかなり値は張るだろう。
ということは、この人はそれなりにいいところに勤めているに違いないと思った。スーツ姿ということは、まあ普通に考えてどこかしらの企業に属しているのだろう。今判断できることはそれぐらいだ。
「看板が見えてきました、もう少しです」
余計なことを考えながら走っていると、いつの間にかかなり近くまで来ていた。楓の言う看板が見えたならば、後大体500メートルぐらいだろう。
楓がこちら側を振り向き、じいっと見てきた。何だろうと考えながらその顔に笑いが浮かぶのも見届けた。
「二人とも元気そうっすね、じゃあラストスパートかけますよ」
またあの爆発音が周囲一帯に響いた。立ち並ぶ高層ビルのガラスというガラスが、全て割れていく不快な音もよく聞こえる。爆発音の音量から一つ察することがある。
あの軍勢は少しずつこっちに迫って来ている、と。
それも考慮に入れてのラストスパートだろう。力強くコクリと頷き、横のおじさんの顔色も覗う。さも当然とでも言いたげに、大きく頷いた。
瞬間、楓の顔に試合モードの真剣さが宿る。秀也は、自分たち二人が思っていた以上にスピードを上げた。一瞬反応が遅れただけでもうすでに何メートルか間が開いてしまった。
必死でその間を埋めて目的地へと走る。もうすでに残り300メートルを切っている。到着寸前だ。
「看板とはあれだな?なるほどどこに行きたいのかは大体の見当がついたぞ」
おじさんはこっちを向いてニヤリと笑った。その目には、この子供達中々素晴らしい才能を持っているという感情がこもっているように見えた。
「でしょ?あっこなら銃なんて絶対に使えないからね」
思いついたのは自分ではないが、竹永が思いっきり得意そうにしてそう言った。考えた張本人である秀也が、やれやれと苦笑しながら走っていることは本人以外誰も知らない。
「着きましたよ」
秀也は、ゆっくりとその走るスピードを落とし、目的の箇所にたどり着いた。
そこは、普段ならうるさくてしょうがないのだが、今は人がいないから、がらんとして淋しげな空気を放っている。
「そう、目的地というのは・・・」
続きます
