複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=  第二十五話更新  ( No.37 )
日時: 2011/10/13 20:25
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: OYJCn7rx)

第二十六話 第二の使者との闘い







 夜ではなく昼であり、当然のごとく辺りは明るい。さっきから、全く鬼の近づいて来る気配が無い。それが、逆に竹永達の不安を駆り立てていた。
 昼であり、明るいと言うことはこちらからも確かにそうなのだが、向こうからもこちらの姿は簡単に丸見えになる。夜の暗闇に紛れることが出来ないのだ。さらに、間髪いれずに追いかけてくるならば、焦りを感じて何も考えず逃げるだけでいいのに、こうも時間を開けられると何か策でも準備しているのではないかという疑念がかなり浮かんでくるのだ。
 さっきから立て続けに二回の大きな声のこだまと、主催者からの報告も入った。最初の物は、なぜか氷室がジールと叫んでいたものが微かに聞こえる程度。その次にジールが消えたという連絡事項だった。このことから察するに、ジールというのは主催者側の人間。証拠どころか、その案が最初に浮かんだのは主催者の、『僕たちとしては残念なことに』発言だ。このことからジールは彼らの仲間となる。
 そして、最後に聞こえたのが一番気がかりになっているのだ。前触れも無く、主催者の連絡が終わったタイミングで空に轟くような怒号が飛んだ。言葉になっているのかさっぱりの、感情を吐きだすためだけの絶叫。やり場の無い怒りだけでなく、始末しようの無い哀しみも含まれていた。
 そしてそれから、十分程経った頃の話。

「さっきのあれは、何だったんだ?」

 ふと、楠城がさっきから感じている疑問を漏らした。それが、さっきから竹永も斎藤も気になってならなかった。あの声の発してとして考えられるのは数人降りてきている彼らの仲間のうちの一人しかいない。

「分からない、でも嫌な予感がする」

 それに対して竹永は先刻からずっと感じている不安の存在を吐きだした。ハア、と深い溜息を漏らし、緊張で顔を強張らせている。ただそれは彼女だけでなく残りの二人に置いても同じ。楠城は楓の抜けた穴を埋めようと、仏頂面で色々なことを考えている。斎藤も少しでも力になろうとあちらこちらの様子をうかがって、奴らが来てもすぐに対応できるように見張っている。
 その表情には全て、恐れを抱いたような暗さがあった。

「楓達はちゃんと生き残っている。それなら・・・それなら私達も生き残らないと・・・」

 後、十時間は切っている。もうここまで来た、気持ちを強く持て。竹永は自分自身に、刻み込むように語りかける。先輩らしく後輩に威厳を見せないといけないのだと、納得させる。恐怖だって紛らわせて見せる。

「そういや、楓は氷室にボロクソ言われてないかな?怒りのはけ口として」






「キレんなって、お前いなかったらあの策使えなかったんだから」

 あいつ、余計なこと言いやがってと、楓は青く澄み渡った空を苦笑いして睨みつけた。いらない発言はもちろん『楓君達すごいね〜。いや、どちらかと言うと楓君が、かな?だって氷室ちゃんはただ楓君の言うとおりに動いてるだけだったもんね〜』部分だ。
 そのせいとしか言いようが無く、さっきからずっと氷室は機嫌が悪く、全く楓の言葉に訊く耳を持っていない。どんだけ俺は嫌われているんだと、かなり心配になってきた。
 しかし、当の氷室は全く別のことに、怒るのではなく心配していた。さっきから少しずつ聞こえていた音が、段々と爆発音が遠ざかっている。遠ざかって入るが方向としてはおそらく、叶たちのいる方向だ。また、連中の仲間が動いたのかと、気を張り巡らす。
 多分これは、小細工抜きのあぶり出し法だろう。中途半端な理性が身を滅ぼすのなら、ありったけの武器を使ってシラミつぶしをした方が適していると踏んだのだろうか。
 でも、これなら簡単にみんな逃げられるのではないかと、多少安心もしていた。
 実際はこの策を取られると、近くにいた場合は非常に死の危険性が高い。しかし、まそも近くにいなかったらと仮定しよう。すると、彼のこの策略はマイナス方向に働く。
 果たして彼はそのことを、もしも失敗してしまうのならばそれ以前に気付くことができるのだろうか?
 その答えは、誰も知らない。それはまるで神のみぞ知る世界という奴だ。本当は神でさえもこれから先の運命なんて、分からないのに。




                                           続きます



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そろそろお気づきでしょうが氷室はとても耳が良いです。
というかどっかで書いたかも。
では、次回に気付きます。