複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=   鬼ごっこ編第四話 ( No.4 )
日時: 2011/09/21 18:25
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Jagfnb7H)

第五話 第一の建物





「そう、ここが目的地の空港です」

 闇戯空港、つい三年前に出来た新しい空港で、ハブ空港として造られた。開発が決まった時は町おこしだ、と村長は喜んだ。
 実際ここは首都圏なのに妙に人口が少なく、闇戯村だった。そこに現れたのがこの空港だ。この空港の開発により、人口は飛躍的に増加し、観光客も現れるようになった。
 以前同様治安は良いが、ここから離陸する飛行機の音はうるさくてしょうがない。特に、近隣に住む人々からは強い苦情が来ている。近畿にある埋め立て地に建っているところを見習ってほしい。もっとも、闇戯町は海に面していないからそれは不可能なのだが。

「確かに、ここでは銃は使えないな」

 ハイジャックなんかが起こったら大変なので、銃の持ち込み不可能。さらに、さっき使っていたような爆弾の持ち込みも不可能である。持ち入ったらおそらくルール違反になるだろう。
 そう判断したので空港を目的地に定めたのだ。ここなら鬼が入って来ても視界が開けた所ならすぐに判断できるうえに、隠れる場所や逃げ場も多い。銃を捨てて鬼が入って来てもすぐに対応できる。

「早く中に入って奥に進みましょう」

 その呼びかけと共に、先輩とおじさんは動いた。鬼は今どうなっているか確認するため振り返る。結構近いところまで迫って来ているようだ。
 かなり数が減っていることからおそらくいくつもの部隊に分かれて追っているのだろう。ここに向かってきているのは爆撃を目撃した時の十分の一もいないだろう。
 とりあえず、奥へ奥へと進み、二階にたどり着いた。吹き抜けになっているので一階の様子は丸見えだ。
 骸骨の兵団が入口に到着する。連中は、何を考えることもなく、人間ではなかったので自動ドアが開かないのに気づいてから、無理やりこじ開けて一斉に突撃した。もちろん、ルールなんて考えずに銃を捨てることなどもせずに、だ。
 ここで俺たちはルール違反者がどうなるか直にこの目で見ることになる。
 武装したまま突入してきた髑髏の部隊は突然、その歩みを止めた。そして、一体の骸骨が苦しそうに呻いた後に、砂のように真っ白な粉となって風に吹かれて消えてしまった。同様に、うめき声が次々と上がり、目の前から骸骨の部隊は全て、文字通り塵となって消え失せた。
 背筋に悪寒が走る。場所選びや、ルールの予測は予想以上に慎重に行わなければいけない、と。今回はたまたま正解したが、もし読み間違えていた場合、連中はこっちに発砲してきただろう。もしくは、何かの手違いでルールを俺達が破ってしまってこっちが消えていたかもしれない。
 隣に立っている二人も流石に青ざめている。だが、おじさんの方を見た時に、ここに来た目的を思い出した。

「おじさん、早く座って。三十分しか無いから早く手当てしないと」
「ああ、悪いな。言い忘れてたな、俺の名前は楠城怜司(くすのき れいじ)だ」
「楠城さんですか。俺は楓秀也です」
「竹永叶です。楓、タオル」
「ありがとうございます」

 現実世界にいたときからずっと首にかけていたタオルをこっちに投げて渡してくる。楠城の患部の様子を見る。大した出血量ではないので、直接圧迫止血法でなんとかなりそうだ。
 タオルを傷口に押し当てて、締め上げるように思いっきり引っ張る。楠城は、少し痛そうに顔を歪めたが、声は押し殺していた。
 応急手当をしながら、一つ楓は頭に引っかかる事があった。鬼たちのことである。彼らは、ここに着いた時、一切の動揺はもちろん、反応を示さずに躊躇せずに進入してきた。そこから生まれる一つの仮説。鬼たちには理性が無いということだ。理性だけではない、思考もだ。
 感情という存在も全く無くて、ただそこにいる人間を殺すことしか頭の中にインプットされていない、文字通り生ける屍であり、それ自身が殺戮兵器なのだ。
 空港内にある、液晶表示される時計に目を向ける。まだ入ってから十分程度しか経っていない。楓の脳裏に、かなりのリスクを伴うが、上手くいけば逃げ切る確率が大幅に上昇する案が思いついた。鬼を減らす方法が。

「あの、ちょっと提案が・・・」
「あれ・・・鬼じゃない?」

 楓がその作戦を二人に話そうとすると、竹永がいきなり、大通りの遠くのほうを指差してそう訊いてきた。
 白骨が迷彩柄の軍服を着ているのだからおそらく鬼であろう。しめた、秀也は心の中でそう叫んだ。

「楓、何かいいたいことがあるんじゃないのか?」

 鬼の方に注意が向いていたから竹永は気付いていなかったが楠城は楓が何か提案があると言おうとしていることをしっかりと聞いていた。訊かれるがままに、秀也は答えた。

「ええ、ここから出てあいつらに見つかりましょう」











                                     続きます