複雑・ファジー小説

Re: DARK GAME=邪悪なゲーム=   鬼ごっこ編第五話更新 ( No.5 )
日時: 2011/09/21 18:29
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Jagfnb7H)

第六話 作戦





「ここから出る?何言ってるの!」

 楓の提案に、速攻で竹永がいちゃもんをつける。まあ確かにそうだろう。制限時間がまだまだ残っているというのにこちらに関心を示していない鬼にわざわざ姿をさらすなんて、常識ではまず考えられない。じっとしていたら無事なのに一々危険の中に出向くなんてもってのほかだ。
 傍にいる楠城も同じように思っているらしい。確かに今から行おうとしていることは相当なリスクを伴う。だから、その作戦の真の意図を伝えてみることにした。

「ここにおびき寄せてルール違反で鬼の数を減らすんです。そうしたら、この先逃げる時少しは楽になるはずです。目先のことだけでなく、後先のことも考えないとこの『げえむ』は、鬼ごっこはクリアできません」

 でも・・・弱々しく反論しようとする声が、叶の口から洩れる。楓の言うとおりに行動するか、今この瞬間の安全を確保するか決めあぐねているのだろう。極端に反論しようとする意志はないが、そのまま肯定する気にもなれないのだろう。
 迷い、考えている年長組二人に代わり、実際するとしたらどうなるか見せるために、楓は立ち上がった。二人が止めようとする前に階段を駆け降りる。二人に待っているように手で合図すると、それを見た楠城たちはブレーキをかけて、秀也の行動を見守っていた。
 玄関付近に転がっている手瑠弾のうちの一つを蹴り飛ばしてドアのガラスを割って外に出す。ガラスのドアに近付くと自動ドアが開き、秀也は外に飛び出した。
 つい今蹴りだした手瑠弾を拾い上げ、ピンを抜く。そして、できるだけ遠くに投げる。ピンを抜いてから、五秒ぐらい経ったころであろうか、地に落ちた爆弾は炸裂した。凄まじい爆発音が周囲一帯にこだまする。
 その快音、いや、破壊音を聞きつけた鬼たちはこっちに向かってきた。顔はもちろんのようにしゃれこうべなのだから、目の辺りは空洞になっている。鼻も文字通り孔が開いている。こうして見ると結構怖い。

「そのまんまだ、こっちに来い!」

 人の言葉が理解できるかどうかは分からないが挑発の言葉を口にする。音に反応したのか挑発に乗ったかは知らないが、こっちに向かって部隊は走ってくる。
 それとも行進と言うべきだろうか。規則正しい動きで機械のような動きで詰めよってくる。

「ゴール」

 楓の身体が自動ドアを通り抜ける。さっきの階段を上り、先輩達のところに戻る。普段から走り慣れているからか、ほとんど身体は疲れていない。
 心配していたかは分からないが、今となっては安堵の表情を浮かべている。ようやく、おびき寄せた鬼たちが透明なドアをくぐり抜ける。最初に追ってきた奴らと同じように塵となって消え失せた。

「ほら、大成功でしょう」

 得意げに、笑顔を作って二人に向かって笑って見せた。全く、そういう風に呆れたように溜息をつくのが楠城から聞こえる。
 そんな中だ、妙な音が聞こえてきたのは。
 カツッカツッと硬い足元を踏み鳴らすような音が聞こえる。方向から察するに階段の辺りだろう。
 それよりも、問題なのは何が来ているかだ。もしかしたら人間かもしれない。しかし、もしも武器を捨てた鬼だったとしたら、急いで逃げないといけない。
 三人の顔に戦慄が走る。そうして身構えた三人だったが、やってきたのは意外にも、一人の女の子だった。それも、秀也と同い年ぐらいの。いかにも学校帰りと言ったような制服を着ている。
 新しいお客様も制服を着ているので、この場にいる四分の三もの人間が制服を着ているという変な光景になった。特に楠城さんに注目したとしたら。

「楓・・・秀也・・・」

 いきなり、現れた人間が楓の名前を呼ぶ。なぜ彼女が自分の名前を知っているか、秀也には見当もつかなかった。不信そうな顔をして、首をかしげている。でも、確かにどこかで見覚えがある。

「何?楓の知り合い?」
「知りませんよ、俺の知り合いにこんな美人いません」

 今咄嗟に美人という言葉が出てきたが、改めてその女子を観察する。真っ黒な髪の毛にうっすらと浮かぶ染めているであろう茶色い髪の毛。長さは秀也と同じぐらいだ。瞳の色も極めて日本人的で、茶色と黒目、そして白目だ。
 発せられる雰囲気は、冷たいと言うか何と言うか。人を寄せ付けない雰囲気が漂っている。やっぱり、楓にはどこかで面識があるような気がしてならない。

「こんなところで会うとは思っていなかったわ」
「だから誰なんですか?」

 ここに来てから敬語の連発だな、不意にそう感じた。初対面の人間には敬語が基本、年上にも当然使うので、今のところタメ口をきける相手がまだ現れてくれない。
 そんなことより、いきなり登場したこの女子は、尚更嫌悪の態度を発散させ、忌々しげに楓を睨みつけて吐き捨てるように悪態をついた。

「さすが最低人間ね、全く覚えていない」
「ハア!?お前一体何言って・・」
「忘れたとは言わせないわよ。あなたは、小学校時代に罰ゲームで楽しんでいたでしょう?」
「だから何いっ・・・ってお前まさか・・・」

 この発せられる冷たい空気、黒色に混ざっているうっすらとした茶色い髪、嫌いなものを冷たく睨みつける鋭い目、嫌いな者には容赦をしないキツイ言葉づかい、無駄に、と言ったら失礼だが整った容姿。これではまるで・・・

「ようやく思い出したようね」

 そうして秀也は一つの名前を口にした。

「氷室冷河(ひむろ れいか)か?」





                                      続きます







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人の名前が残念、とか言わないでね

結構頑張って考えてこれだから。