複雑・ファジー小説
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第一章総集編です ( No.61 )
- 日時: 2011/11/05 20:05
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 1Nlxg6y3)
- 参照: 第二章開幕!
第三十八話 日常————?
昨日起きたあの『げえむ』は本当に現実だったのか、そういう疑問が頭の中で絶えず渦を巻いている。朝自分のベッドから起きて以来ずっと、片時も頭を離れること無く、他に集中できぬようにフィルターがかかっている感覚。
今この手にある現実が、昨日のあれはただの悪夢だったのだと、しきりに叫んでいる。事実そんな『げえむ』をしたというのに、体に一切の疲労は残っていないし、経過したはずの二十四時間は無かったことになっている。
悶々としたままに身支度を整え、朝食を食べていたために、きちんと時間割をして家を出たか、朝ごはんに何を食べたかは全く覚えていない。朝練に来たというのにこれでは意味が無い。
その様子に見兼ねたのか、心配してくれた一人の先輩に後ろから小突かれた。
「楓、何落ち込んでんのさ?氷室ともう少し話したかった?」
「そんな訳無いでしょう?だってあいつは・・・」
待てよという声が楓自身の中から聞こえてきた。もしも『げえむ』が無かった場合、なぜ竹永が氷室のことを知っているかだ。知っているはずが無いのだから。全てのつじつまを合わせるにはあれは本当に起きた事実だと断定する必要がある。
「カマをかけてみて正解みたいね・・・やっぱり、昨日のあれは事実か」
どうやら竹永も、同じようなことを考えていたのかと、一人勝手に納得する。そして、悪夢であったことを信じて、楓に声をかけた。
だがそれは紛れも無い現実だということを再認識するだけに終わってしまった——。
「これ以上は昼休みに話しましょう。まずは練習」
ほんの少しの間だけ、竹永は暗い顔をした。やはりあれが実際に起こったとしたら多くの者が死んでいるということだ。良い気なんてする由も無い。それなのに、意気を入れなおして急に力強い表情に変わった。
それを見た時に思った、自分もこんなに暗いままではいけないな、と。
「そうですね、じゃあ練習に打ち込みましょう」
第二章 日常—————————編
その日の教室はとても騒がしかった。そういえば、と楓はあることを思い出した。今日このクラスに転校生が来るのだと。可愛い女子だとかカッコイイ男子だとか色々な噂が飛び交っているがいずれにも共通しているのは容姿がすぐれていることだけだった。
座席に着いた時に、隣に座っていた女子が話しかけてきた。
「楓ー、楓も始めろよ、小説。賢いんだから凄い文章かけそうじゃん」
この高校ではなぜか、小説を書くことがちょっとしたブームになっている。そのブームを最初に起こしたのは三年生の先輩で、そのブームに拍車をかけたのが、隣に座るこの女子、乙海 凛だ。
他の者には無い発想力でいきなり小説カキコのサイトの管理人賞をいきなりかっさらっていった。
作者である自分同様に陸上部員の高橋や鈴木、カイコの出てくる『小説カイコ』、タイトルだけでなく文章や中身の面白さも整っているという凄さ。
ついでに言うと楓はそのサイトで読む側に回っていた。理由は、反対側に座る女子が読め読めと最初に言って来たからだ。
もう少し乙海の説明をするならば、楓は監視する側に回っていたりもした。ファジーで書いている作品、『菌糸の教室』では、楓秀也という人物が出てくる。その理由は、やはり反対側に座る女子が楓の興味を惹かせるためにキャラ募集の時に投稿したからだ。
カイコのキャラの土我さんの出てくる『壁部屋』も読んでみるべきだと楓は思っている。
「嫌だ、面倒くさい」
「ちぇっ、まあいっか」
あ、そうそうと言って、彼女は話題を変え始めた。どのような話題に変わったかと思うと、他愛も無い世間話だった。
「ちょっと昨日CD買ったんだけどさ、その店他の店よりも結構高かったんだよね」
「ただのぼったくりじゃねえか」
良く彼女が友達から言われる言葉は、どこにでもいそうな顔をしている、金の使い方が下手、時間も使うのが下手、だ。
「しかもそのCDずっと聞いてたら宿題忘れてた」
「やっぱり色々使い方下手だな」
「まあね、でも猫と亀さえ見ていたらそれもおちつ・・」
「もういいよその話も」
家で飼っているのだか知らないが、乙海は猫と亀が好きで話し始めると止まらない。元来博識な彼女は妙に細かいことをしっていたりして、人々の頭に疑問符を植え付けることが多々ある。
野生の猛禽類が高い所から亀を落として甲羅を割って餌にするなんていう話に憤慨した時は、まずみんながその乙海の知識に舌を巻き、一拍遅れて驚いた覚えがある。
「お前らー、席付けー」
突然、授業が始まるにしては早いのに担任が入ってきた。この騒ぎですっかり忘れていたが今日は転校生が来る日だった。
皆がその事に対し、小学生のようにふわふわした気持ちで、落ち着かなく待機していたら、いきなりドアから一人の女子が入ってきた。
「セーフ!!だよね!?」
それが、俺の隣に座るもう一人の人間、赤弥 藍妃だった。
先生に促されるままに素早く席に着く。エナメルを乱暴に下ろして汗に滲む額をぬぐい、ほっと息を吐いた。
「・・・・・またギリギリかお前は。まあいい、転校生の紹介だ」
その瞬間、ほんの少し景色が歪んだような気がした。視界がねじれて、平衡感覚が狂うような。
それが第二の、開戦の合図——。
続きます
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二章始まりました。では、時間が無いので次回に続きます。