複雑・ファジー小説
- Re: DARK GAME=邪悪なゲーム= 第二章スタートです ( No.64 )
- 日時: 2011/11/06 19:53
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: McW0.Kc7)
第三十九話 転校生二名
先生が転校生の方に向いたのか、廊下から軽く顔を出して入れと促した。その時、つい今しがたやってきたばかりの赤弥が話しかけてきた。
「転校生、男と女どっちだと思う?」
もうすぐ入ってくるんだから待っていろよと、楓は弱い溜息を吐く。赤弥は明るい時と暗い時があり、その二つの差がかなり激しい。今は明るい時のモードだ。明るい時は執拗に絡んでくる。
「別にどっちでもいいだろ。じゃあ両方」
小さい子をあやすように適当に楓はあしらい、前を向き直った。またカキコの話題を出されて乙海との勧誘攻めが始まるとひとたまりも無い。
ryuka・・・つまりは乙海がその名前で小説を始めたのは赤弥に誘われたからだ。赤弥藍妃、夏蜜柑という名前で活動している。基本的に二次小説が多く、それ以外だと『幻』をコメディ・ライトで書いているらしい。
内容は、精霊などが数多く出現するファンタジー色の強いものだと前に宣伝してきた覚えがあると楓は思い返す。
暗い方の赤弥だと良く映えて見えるのだが、明るい時の赤弥だとその落ちついた藍色の髪の毛と、透き通るような水色の瞳には対照的に映る。
「両方って何だよ!適当にあしらわれた・・・やっぱり嫌われてる・・・」
出た、暗い方のモード。そういう風に楓が呟いたのが問題だった。
一瞬にして明るい方の状態に戻り、反撃してきたのだ。暗い時に不機嫌になりそうなことを言うと一気に立ち直って捲くし立てるのも特徴の一つ。
だが、それはすることができなかった。ようやく、噂になっていた転校生が入ってきたのだから。ザワザワと騒いでいた教室からスッと五月蠅さといったものが取り払われ、ちょっとした静寂が訪れる。
入ってきたのは中々に顔の整った好青年、といった感じの男子だった。この高校は公立である上、特に規則も厳しくないから別に咎められることも無いのだが、彼は髪を赤く染めていた。
「仇無獅子也(あだなし ししや)、よろしくね」
その姿はどことなく、イグザムと似ていて、一瞬戦慄を感じた楓は顔を上げて大きく目を見開いた。それに、この声どこかで聞いたような気がする。
クラスにいる特に女子たちは珍しいその髪の毛を指してか、整った顔を指してか、小さいながらも黄色い声を上げていた。一応、楓の両サイドの二人も。それのおかげで動揺を見られること無く済んで楓は安心した。
ただし、この次に起こったことに関しては本当に動揺を隠しきることができなかった。まさか、もう二度と会わないのだろうと思っていた人間が出てきたのだから。
もう一人転校生は居ると先生が言った時、より強い騒ぎが教室中に響き渡った。ただでさえ転校生なんて珍しいのに、一度に一つのクラスに二人も来たのだから。
まずは、仇無の名前を黒板に書いた後に、もう一人の転校生を部屋の中に招き入れた。
黒板に『氷』という字が書かれる。
「入って来て良いぞ」
先生がそう部屋の外に言い放つと、はいという小さい返答が返された。これまたどこかで聞いたことのある声だと思いながらもう一度黒板に目をやった。
この瞬間、楓の思考は一瞬だけフリーズした。その次に書かれた字が『室』だったからだ。
いやいや、無い無い無い無いと、首を振ってその考えを打ち消す。あいつがこの高校に転校って?そんなの聞かなかったぞ。とりあえず、楓は関係の無い別人の氷室さんが転校してくると思おうとした。
「氷室冷河です、よろしく」
そう言いながら入ってきたのは、まさしくあの、真っ黒な髪の毛にうっすらと浮かぶ染めているであろう茶色い髪の毛。長さは秀也と同じぐらい。瞳の色も極めて日本人的で、茶色と黒目、そして白目。発せられる雰囲気は、冷たいと言うか何と言うか。人を寄せ付けない雰囲気が漂っている。
自分の知っている氷室冷河でしかなかった——。
「楓ー、どうした?」
赤弥が、楓が慌てて椅子に座ったまま飛び退いたのを見てそう訊いてきたが、返答する余裕は無かった。赤弥だけではなく、クラス中の視線が楓のところに注がれている。
その冷たく痛々しい視線よりもこの現実の方が数倍ショッキングだった。まさかあいつが転校してくるとは、その定型文だけがずっと、楓の頭の中を巡っていた。
しかし、氷室は一切反応を示さずに自分の席を探しだした。氷室の席は廊下側座席の一番後ろ、要するに乙海を挟んで隣の隣だった。
なぜ無視されたかはよく分からなかったがとりあえず楓は落ちついてきて普段通りに戻った。それを見たクラスメイト達は、不可解そうな表情で前を向き直った。もうすぐ授業が始まるのだから。
するとその瞬間、いきなり仇無が壇上で話し始めた。いや、叫ぶと言った方が正しいかもしれないが。
「さぁーさあ、始まるよ。第二のげえむが!」
この瞬間、楓の表情は青ざめていった。あいつ大丈夫かと、驚き呆れるクラスメイトを尻目に、表情から精気が抜けて行く。嫌だった、的中して欲しくなかった予想がついに確定する。あの出来事は全て、現実だった。
「今度のげえむはかくれんぼ!一緒にパラレルワールドに迷い込んだ仲間を探しだすげえむ!参加者は二人、仲間を見つけたらげえむクリア!詳しいことはまた話そう!制限時間は七十二時間」
そこで一旦、彼は言葉を切る。なんちゃってと付け足しながら自分の座席に向かうその姿に、みんな下を捲いて、目を丸くしていた。関わり合いにならないようにしようとも思っているだろう。
この時楓が考えていたのはもちろん、げえむの内容であり、彼の言葉を真剣に受け取った唯一の男子だった。
仇無獅子也→あだ無ししや→あだむししや→アダムの使者
どうやら本当に、達の悪い冗談でも、出来の悪い悪夢でもなく、揺らぐことの無い現実だったと言うしか無かった。
「あー、本当に楓の言ったこと当たったよ、すごーい」
そんな赤弥の声も、一切彼の脳裏には刻まれていなかった。
第二章 日常—————>>パラレルワールド脱出(かくれんぼ)編
続きます
________________________________________________
展開早い?自分でも思ったから気にしないでください。
後、詳しいルールは次回辺り説明します。